キミからが一番

―今日はすれ違う女どもがやたらお菓子を渡してくるのは何故だ。―

冬獅郎は執務机の横に積み上げられたお菓子―9割がチョコレート関係―を睨みつけ、大きな溜息をついた。
「・・・誰がこんなに食うんだよ・・・。」
そう呟き、やりかけの書類に目を落とした。
「隊長ー只今戻りましたー・・・って隊長モテモテですねー。朽木隊長とはれますよ。」
入ってくるなり積み上げられたお菓子の山を見て松本は声を上げた。
「なんでこれでモテるんだ?」
あ、眉間に皺。
「あれ?隊長、今日は2月14日ですよ、14日。バレンタインデーじゃないですか。」
「バレンタイン・・・。」
「そーですよー。おかげで京楽隊長なんか浮き足立っちゃって仕事にならないって七緒が嘆いてました。」
その言葉で冬獅郎は更に眉間の皺を深くする。
「どうせ義理だろう。そんなもの大量にもらっても嬉しくもなんともない。」
「じゃぁからだったら嬉しいですかー?」

もう、音がしそうなぐらいの勢いで顔を真っ赤にする冬獅郎に松本はにやりと嫌ぁな笑みを浮かべる。
「ななななな・・・!」
「もーv隊長ってばわっかりやすーいvー!隊長がねー!」
「松本ー!」
「呼びました?」
「おわ!」
何処から現れたのか、冬獅郎の後の窓から顔を出したに必要以上に驚く。
「やだなぁ、隊長。そんなに驚かないでくださいよー。別に気配消してないし。」
窓枠に肘をついてにこにこと言うに、冬獅郎は顔を真っ赤にしたまま、酸欠の金魚のごとく口をぱくぱくさせている。
「あ、、隊長がに話があるんだってー。あたしはちょっと用事があるからあとよろしくねーv」
「はーい。」
「松本ー!!」
にこにこと手を振って部屋を出て行く松本に向かって冬獅郎は叫ぶが声が廊下に響き渡っただけだった。

「で、隊長。あたしに話ってなんですか?」
よいしょと窓枠を乗り越えて部屋に入ってくると首をかしげて訊ねる。冬獅郎はまだ酸欠の金魚状態。
「・・・大丈夫ですか?隊長。」
「・・・(ぱくぱくぱく)。」
「たいちょー?」
「・・・(ぱくぱくぱく)。」
「たいちょー!」
「・・・(ぱくぱくぱく)。」
「隊長!」
すぱこーん!
「だ!」
どこから出したのか巨大ハリセンで冬獅郎は吹っ飛んだ。
「大丈夫ですかー、隊長。」
「てめぇ・・・ハリセン振り回してるやつの言う台詞か!」
「あ、大丈夫そうですね。」
「人の話を聞け!」
「で、話ってなんですか?」
ピシ
石化した。もうガッチガチに。
「隊長?」
「・・・今日は・・・、」
「はい?」
「今日は!バレンタインなんだろう!」
「あーそうですねーそんなものもありましたねー。」
忘れてましたと言うに冬獅郎はちょっと拍子抜けしたような顔をする。
「おまえは・・・チョコをやる相手とかいないのか?」
「えー。いませんよー。あ、なんですか?隊長ほしいんですか?そんなにいっぱいもらってるのにー。」
執務机の隣に積み上げられたお菓子の山を見てちょっと呆れたような声を上げる。
「あ、それともあたしからほしいんですかv」
「な!」
「別に欲しいんならあげますよー。ちょっと待っててくださいね。」
言うが早いかまた窓から瞬歩でその場から消えると、3分後、手には小さな包み。
「はい。隊長。どーぞ。」
にーっこり微笑んで渡される包みを顔を真っ赤にしながら受け取る。
「さて、それじゃあたし仕事残ってるんで戻りますねー。」
「あ・・・あぁ・・・って窓から出て行くなー!」
冬獅郎の叫びを背に受けながらは仕事に戻っていった。
「・・・ったく・・・。」
そう呟きながらも冬獅郎はなんだか嬉しそうだった。

ー、あんたさー、さっさと隊長とくっついちゃいなさいよー。」
「えー、だって冬獅郎の反応って見てるとおもしろいんですよねーvv」
「まー確かにね。・・・もうちょっとひっぱる?」
「もちろんじゃないですかv」
とかなんとか話してる姿が飲み屋で目撃されたとか。
シロちゃんってこんなキャラだっけ・・・!?
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