Green and Blood〜act30〜
その日、は一人で街に出ていた。今までいろいろと(特にナイトメアの世話)忙しかったため、ゆっくりと街を見て歩くことも無かったため、初めてのんびりと散策をしていた。
「も・・・い・・・。」
「ん?」
ふらふらと目的も無く歩いていると路地裏のほうから何か声がする。なんだろうと想い、声がしたほうへと近づいていくと二人いるらしい。話し声が聞こえる。
「もう一度言ってみろ。」
「ひっ!・・・!」
「・・・グレイ・・・?」
声のするほうへと近づいていくとそこにはいつもとは明らかに違う雰囲気を纏ったグレイの姿。
「また同じことを俺の耳に入れてみろ。次はこれくらいではすまない。」
グレイのその言葉と同時ににらみつけられていた男はその場から慌てて立ち去る。その男の耳からは大量の血が流れていた。
「・・・はぁ・・・っ!・・・。」
「ちっす、グレイ。見回りごくろーさん。」
大きく息を吐いたグレイは男が立ち去ったのと反対側にいるに気づくと一瞬驚いたような顔をして、次の瞬間には苦虫をつぶしたような表情を作った。しかしそれよりも、今の光景を見ていただろうに平然と自分に声をかけてくるに、驚きを隠せない。
「あ・・・あぁ・・・その・・・君は・・・その・・・なんとも思わないのか?」
「何が?」
こてんと首を傾げれば、髪につけた髪飾りがゆれる。
「いやその・・・なんだ。ついかっとなってしまって・・・。」
「うん。それがどうしたの?誰だってかっとなることはあるよ。いつもそんなに怒らないグレイがかっとなるようなことがあったんだ。よっぽどのことなんでしょ?」
気遣わしそうにグレイを見つめるにグレイは目をそらす。
「俺は・・・その・・・。」
「いいよ、言わなくても。言いたくないなら今は聞かないから。ね。そろそろ帰ろう。ナイトメアがサボってないか心配だしね。」
そう言ってにっこりとは微笑み、グレイの手をとって歩き出す。そんなの姿に呆気にとられていたグレイの顔に、自然と笑みが浮かんだ。