あのこは優しいですね。

第十話〜それぞれのココロ―双葉―〜

突然、私たち兄弟は「大事なお客が来る」ということで店の奥座敷に集められました。
そしてそこで言い渡されたのは私たちには婚約者がいるということ。
なんでも昔からのお付き合いの食品問屋の娘さんで、
うちの店の誰かと添わせてほしいといわれたそうです。
そして今日。その娘さんが尋ねてくるとか。

やってきたそのこはさん。弟の陸と友達だそうです。
自己紹介されて少し話をして。
明るくて元気なコだなと思いました。

それからさんはちょくちょく店に遊びに来るようになりました。
人手が足りないと店を手伝ってくれたり。
私が水だるに落ちたり食虫植物に食べられそうになっていると
一番に助けに来てくれます(少し恥ずかしいですが)

その日も私は食虫植物に食べられそうになり、さんに助けてもらいました。
相変わらず澪に「役立たず」呼ばわりされ、いつものことながら少し凹んで。
誰にも見つからないように屋根の上で反省をしていました。でも。

『やっぱりここにいいた。』

さんに見つかってしまいました。

『何で見つかったんだろうって顔してる。』

私はそんな顔をしていたのでしょうか。

『あたしはツナギだよ?陸と同じ。探し物は結構得意なの。』

そういってさんは私の隣に腰を下ろします。

『双葉って一生懸命すぎるんだよ。』

『双葉はもうちょっと落ち着いて。自分で駄目だだめだって追い詰めないで。大丈夫だから。出来ないことは誰かに助けてもらっていいんだよ?』

『一生懸命になりすぎて慌てるからまた失敗するの。だから落ち着いて。あたしも陸もみんな助けてくれるから。』

さんはそう言って微笑いました。私はなんだか元気が出た気がして、

『ありがとう』

お礼を述べました。
「ん?思ったこと、言っただけなんだけどな。お礼、言われるほどのことじゃないよ。」
それでも私は嬉しかったんです。いつもどじばかりしている私にこんなことを言ってくれる人はあまりいませんでしたから。
「さ、ご飯ご飯。腹が減っては戦は出来ぬってね♪」
そういってさんは下へ降りていきました。私もその後についていきながら、
ああ、こういう子が店にいたらどんなにいいだろうと思いました。

あわわわ;;しばらくサボってたらえらいことになってきた・・・。
アホっぽい・・・(いつものこと
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