デート〜皐月の場合〜

「さぁ!皐月!行くわよ!」
「つーか、なんでお前が仕切ってんだよ。」
皐月の突っ込みも何のその。今日は皐月とデートです。
「だってあんたに仕切らせたら何処連れてかれるかわかんないんだもん。」
「ほっとけ。」
日本語がほとんど分からない皐月とのデートは異界でする事にして、待ち合わせはひよこやの前。
「にしても、デートっぽくない恰好よねー。」
「何か文句あるか?」
「いえ。全く。」
むしろ皐月がちゃんとした恰好してたらちょっとキモイわー(酷)。
「で、どこ行くんだよ。」
「ん。山。」
「は?」
大きなバスケットを持ち上げてそう答えれば、皐月が間抜けな声を出す。
「今紅葉が綺麗でしょー。ピクニックよ、ピクニック。お弁当作ってきたんだからー。」
えっへん。と胸を張れば、
「お前・・・料理なんかできんだ。」
「あら失礼ねー。これでも一人暮らしを何年続けてると思ってるのよ。毎日自炊ぐらいしてんだから。」
皐月に意外そうな顔をされ、ちょっとむくれてみる。
「まっ、期待はしないでおくなー。」
「むー・・・あとで絶対今の言葉を後悔させてやるー!」
けらけらと笑う皐月にあたしはぐっと拳を握り締める。
「んじゃ、馬借りてくるな。山っつったら馬じゃねーと遠いだろ。」
「あ、うん。行ってらっしゃい。」

しばらくして皐月が馬を借りて戻ってくるとあたしたちは空経由でしか行けない穴場の紅葉スポットへ。
「おー、みごとな紅葉だわー。」
「すげーな。」
そこは赤や黄色やオレンジに染まった葉で埋め尽くされていた。
「さっすが空からじゃないと来られない穴場スポット。」
あたしと皐月はしばらくその場に立ち尽くして秋の色に染まる木々を眺めた。
「・・・さてと・・・もうちょっと上行ったあたりに広いところがあるから、そこでお弁当食べよ!」
「おう。ま、あんま期待はしてねーから安心しろ。」
「うわー。何かむかつくわー。絶対おいしいって言わせてやる。」
ムキー!と反論するあたしを見て笑いながら皐月は紅葉の木の間を登っていく。あたしはその後ろをお弁当のバスケットを抱えて小走りについて行く。

「おー!すげー!」
皐月が声を上げるのも無理は無い。そこだけ開けた広場のようになっていて、そこには紅葉した葉が絨毯のように敷き詰められていた。
「穴場中の穴場よ。ここは。さ、お弁当食べよう。」
あたしはバスケットからビニールシートを出して広げ、作ってきたお弁当を取り出す。因みに作ってきたのは日本のもの(さすがに異界の食材は・・・ちょっと・・・)。おにぎりとサンドイッチ、鳥の唐揚げ、卵焼きにタコさんウィンナーetcetc。
「どーだ!」
「へー・・・見た目はうまそうじゃん。」
「見た目はってどういう意味よ。うまそうじゃなくてうまいの!うりゃ!食ってみろ!」
「ぐほ!」
相変わらず失礼なことを言いまくってる皐月の口にサンドイッチを押し込む。因みにサンドイッチに使ったパンもあたしのお手製よ!
「・・・ん・・・うまい。」
「よっしゃー!」
ガッツポーズ。
それからお弁当をたいらげ、何故かその場で組み手につき合わされた。そして日が暮れて肌寒くなってきた頃、あたしたちは帰路についた。
まぁ・・・皐月とのデートにしては・・・上出来だったんじゃない?
皐月とデートってなんかイメージわかないなぁ(苦笑)。
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