デート〜壱也の場合〜

「こんにちは、壱也さん。」
「こんにちは、さん。」
今日は壱也さんとのデートです。

「迎えに行きます。」と言われていたのであたしはヤマトの家で仕度だけして大人しく待機。
しばらく待っていると表からバッサバッサという羽根の音。・・・何事?そう思っていると扉をノックする音。
さん、迎えに来ましたよ。」
「あ、はい。今行きます。」
表から声をかけられ外に出れば、壱也さんが籠と一緒に待っていた。そして冒頭へ。
「えーと、壱也さん?」
「はい。」
「それでお出かけですか?」
「そうですよ。」
「じゃぁあたしは自分で飛んで・・・ガシはい?」
翼を出そうとした瞬間、壱也さんに肩を掴まれた。そしてそのまま何処で待機していたのか、もう一つの籠にぽいっと。
「え!壱也さん?!」
「じゃぁ、出してください。」
「はい。」
「ふぇ〜?」
壱也さんってこんなキャラだっけ?
混乱する頭でそんなことを考えながら、あたしは壱也さんに拉致された。

「壱也さん・・・?」
「あぁ、さん。よくお似合いですよ。」
「あ、ありがとうございますvじゃなくて!!あたしはなんでこんな恰好をさせられているのでしょうか?」
「デートだからですよ。」
「答えになってません。」
壱也さんに拉致されて、連れてこられたのはヤマトでも有名な料亭。そこであたしはものすごく上等な、ものすごく素敵な着物に着替えさせられている。
「私は弟たちのように面白いところを知りませんから。こういうことしか出来ないんですよ。」
壱也さんはそう言うと、庭へと通じる障子を開け放つ。
「うわぁ・・・。」
そこは一面のピンク色。桜がちょうど見ごろなぐらいの花を咲かせ、池には紅白の鯉が優雅に泳ぐ。
「・・・綺麗・・・。」
「気に入っていただけましたか?」
そのまま庭に降りた壱也さんがにっこりと微笑んでいる。
「もちろんです!うわぁ・・・。」
あたしが縁側に出ると、壱也さんが手を貸してくれたのでそのまま庭に降りる。
「すごい・・・。」
「お気に召していただいて何よりです。」
その言葉が合図だったかのように廊下側の襖が開き、女中さんが入ってくる。そして手にしてたお盆に乗っていたものを縁側に並べる。
「ごゆっくり。」
にこっと笑って女中さんは静かに部屋を出て行った。並べられたものは桜をモチーフにした和菓子とお茶。
「わぁv」
「さぁ、頂きましょうか。」
「はいv」
あたしたちは桜を眺めながら和菓子を食べ、他愛もないおしゃべりでその日をすごした。

「今日はありがとうございました。」
「いえ。ほかの弟たちと違って気の利いたことなんて何も出来ませんでしたが・・・喜んでいただけたようで何よりです。」
帰りもまた籠で家まで送ってもらってお礼を言えば、壱也さんは申し訳なさそうに笑う。
「そんな事ありませんよ。本当にありがとうございました。」
本当に素敵なものをありがとうございます。
そう言えば壱也さんもほっとしたように表情を緩めてくれた。
「そうですか。それならよかった。それでは。」
「はい。本当にありがとうございました。」

家に入り、今日のことをに話せば、自分も見たかったと駄々を捏ねられた(また?)。壱也さんが持たせてくれたお土産の和菓子を与えたら大人しくなったけど(苦笑)。
壱也さんとはデートって言うかなんていうか(笑)。
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