「どもー、でーす。」
あのこはとてもいいこです。

第九話〜それぞれのココロ―壱也―〜

最初、お付き合いのある食品問屋のご主人から、娘さんをうちの兄弟の誰かと添わせて欲しいと言われたときは驚きました。
そのなかにはもちろん私も入っていて。
澪に相談したところ、「旦那の好きにしろ」と言われ、私はとりあえず了解しました。
別に今すぐ夫婦になるわけでもないし。それでもいいかと思いました。

そしてしばらくした休みの日。その子がうちへ挨拶に来ると言うことで。
皆には「大事なお客様」が来るとだけ伝えて。
三笠にもあわせなくてはいけないと思い、その辺は椎に捕まえてきてもらうことにした(案の定競馬場にいたらしい)
そしてその子はやって来た。―なぜか―末の弟、陸と一緒に、謎の赤い龍を連れて。

聞けばうちの場所がわからなくて迷っていたら陸と会ったとか。
二人は日本で同じ学校の同級生らしい。
ヤマトの子が日本の学校に通っているのは結構珍しい。
なんでも奥様に「社会勉強」とかで一人暮らしをさせられているとか。
九尾一族と鴉天狗一族の血と人間の血が混じっていてしかもツナギの能力もあるというなんとも複雑な体質で。
陸が婚約者の候補に入っていると言うことは本人も知らなかったらしくて。
むしろ婚約の話も突然言い渡されたらしくて。
最初はパニックになっていたけど、落ち着くととてもしっかりした子で。
私は「ああ、この子はいいこだな。」と素直に思った。

そしてと名乗ったそのこは暇になると遊びに来るようになった。
店が忙しそうだと嫌な顔もしないで「いいよいいよ」と手伝ってくれて。
私が暇そうにしていると、「話し相手にでもなりましょうか?」と言ってくれたり。
そしてある日、私が陸が店番をしている姿を眺めているとさんは言いました。

『壱也さんの視線の先にはいつもりくがいますね。』

『壱也さんがりくを見る眼差しはとても優しいです。』

『壱也さんはりくのこと、とても大切に思ってるんですね。りくがちょっと羨ましいです。』

そう、微笑んでいました。
なんだかそのときとても嬉しかったですよ。
幼いころから『跡取り』と言われ、そういう風に育ってきました。
私が何かに気をとられると『よそ見してないで仕事をしてください』なんて澪に言われて。
でもそのことをそんな風に見てもらえるとは思っていませんでした。
とても嬉しくて思わず私は

「ありがとう、さん。」


お礼を言いました。するとさんは何にお礼を言われたのかわからないようで、首をかしげて、
「はい?へ?んー、これは有難うと言っておくべきデスカ?」
なんていうもんですから私は笑ってしまいました。
「へ?なんで?あたしへんなこと言いました?!」
慌てるさんをみて私は更におかしくなってしまいました。
「いえ、いいんですよ。気にしないで下さい。」
「気にするなと言われても気になります!」
そんなこんなでその日は日も暮れて。さんは明日も学校があるということで日本に帰りました。

私はそんな明るく優しいさんの後姿を見て、この子だったら妻にしてもいいかなと、本気で思いました。
また、遊びに来てくださいね。さん。

壱也さんから見た主人公の印象。壱也さんのキャラがいまいちよくつかめてないのでかなりおかしいです。
しばらくこんな感じで行こうかと思います。
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