らぶ・あたっくは近所迷惑!act10

そんなこんなしているとべろんべろんに酔っ払った稲葉先生が奈良山に絡みはじめた。
「参ったなあ、俺も未成年ですよ先生。学生証、見ます?」
「何を白々しいことを。」
「まったく・・・じい様と一緒に月見酒してた奴が何を言う・・・。」
はぁ・・・とため息をつけば「そんなこともあったねぇ」と返ってくるから厄介だ。
「いい機会ですわ是害坊。私、一度はっきりさせておきたいと思っていたのです。どちらが格上の妖怪なのか、はっきりと!」
「俺が下でいいですよ。国を丸ごと滅ぼす九尾の狐に、俺みたいな古い天狗が敵うわけないですし。じゃあ、そういうことで。」
「こら!お待ちなさいっ!」
茶碗片手にの隣にさも当然のように戻ってこようとする奈良山を完全に酔っ払った稲葉先生が呼び止める。それを無視して奈良山はの隣に座る。
「・・・つーか・・・ご先祖様の眷属があんなのなんて嫌・・・嫌過ぎる・・・。そしてあれの眷属にご先祖様は殺されかけたのよね(※少年陰陽師天孤編参照)・・・屈辱だわ・・・。」
とかが呟いていたのはまぁ・・・無視する方向で。

「で、で?そんなお二人はどーやって出会ったわけ?」
いつの間にか八雲と慈吾朗の出会いの話になっていた。
「お、聞きたいか?そう、あれは五十年前の吹雪の日、峠を通りかかったわしは――」
「わざわざ聞くような話でもありませんわよ。」
もったいぶって話し始めた慈吾朗を八雲がさえぎる。
「この男はですね、峠に現れた私を一目見るなり、吹雪の中を猛ダッシュしてきたかと思うと、いきなり私の手を取って『雪女さん結婚してください!』と叫んだのです。」
「・・・・・・あらまあ、それはそれは。」
新井の苦笑と一同(主に女性陣)の呆れたような視線がいっせいに慈吾朗に突き刺さる。そんな中でも慈吾朗のほうはというと堪えていないようで。
「一目惚れだったんじゃから仕方なかろう!」
「だからって、初対面の妖怪に走り寄ってプロポーズする馬鹿がどこにいますか!」
「ここにおるよ。――そう、あれからずっと、今も君の目の前に!」
物凄い決め台詞を吐く慈吾朗に八雲は頭を抱えている。
「・・・白塚。このお爺さん、君の親戚?」
「違います。まあ、近いものは感じるけどね。」
「・・・・・・・・・あんたも似たような感じだったわよね・・・善人。」
赫音の突っ込みに真一が答え、さらにため息をつきながらが呟く。真一の突っ込みを聞いた赫音が肩をすくめて、イタチちゃんも頷く。
「そうだよね・・・あたしだけじゃなかったんだ。」
しみじみと呟くイタチちゃん。もちょっと遠い目。
そのまま二人の出会いの話は続く。まぁ、は相変わらずどうでもいいという感じだが。
「・・・、お前は話に加わらなくていいのか?」
ぶっちゃけめんどい。妖怪とか妖だったらしょっちゅう見てるから珍しくもなんともないし。」
ごもっとも。玄武の問いにお茶をすすりながら答えるはなんていうか本当にやる気がない。むしろ今考えてるのはどういう報告書を出すのかということと、どうやって奈良山から離れられるかということだけである。
隣でにこにこと楽しそうにしている奈良山をちらりと見て、深々と、ため息をついた。
いつも雑鬼に潰される昌浩を見ているので珍しくもなんともないという(苦笑)。
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