らぶ・あたっくは近所迷惑!act5
ちょうど八雲とオーナーの箕輪慈吾朗が食事を運んできたのでとりあえずいったん話は終わり。の食事もこちらのほうに運んでもらい、なんかカオスな感じで食事を開始した。
「ごちそうさまでした。」
その言葉でおひつの傍で座っていた八雲がお膳を片付け始める。
「お粗末さまでした、お祖父様、そろそろ帰りますわよ。」
「ううむ、名残惜しいのう。」
たちが食事をしている間ずっと待機していた八雲と慈吾朗(待機というかひたすら稲葉と呑んでいた)は手際よくお膳を片付けると頭を下げる。
「それでは皆様、よい夜を。お布団は押入れに入っていますから。さんも。」
「了解ー。」
「うん、勝手に敷いて寝るわね。ありがとう。」
と新井が言えば「よろしくお願いしますね」と八雲は微笑む。そして部屋を出ようとしたところに御崎が声をかける。
「ほいはひー、あほはーほーはいのほほはんはへど。」
「お前、いつまでいつまで食っているんだ。―――ああ、失敬。『ちょい待ち。あのさ、妖怪のことなんだけど』と言っているようです。」
江戸橋が恥ずかしそうに通訳すれば、八雲は振り返って立ち止まった。
「何か?あれが出る―――いえ、あれが起こる時間には、まだ少し早いようですけれど?」
「・・・ごくん。いや、それがさあ。出たのよ、ついさっき。」
デザートを飲み込んで御崎は小さく肩をすくめる。それを聞いて慈吾朗は「今夜は意外と早かったようじゃな」とぽつり。ちなみには奈良山のらぶらぶアタックと格闘中(爆)。
「あれは、毎晩出るのは確かじゃが、時間が限定されておるわけではないからのう。」
「それはつまり、いつ始まってどれだけ続くか、予測できないってことですか?」
奈良山を押しのけてが尋ねれば慈吾朗は腕を組んで肯いた。
「そのお嬢さんお言うとおり。まあ、日中に出たという話しこそ聞かんがな。」
慈吾朗が答える間も奈良山が抱きついてくるのを必死に阻止しようと攻防戦が続いている。時々ゴスッという不吉な音がするのは気のせいといういうことにしておこう。
「やっぱりか。深夜にしか出ないならまだしも、ランダム発生条件があると面倒ね。」
「ええ。おかげで、この別館にお客さまをお泊めすることもできなくて・・・。」
神妙な顔で唸る御崎に、慈吾朗は「そんなに悩まんでもよろしいぞ」と笑う。
「八雲から聞かれたでしょうが、わしゃあ駄目で元々思うとるんじゃよ。なにしろ、あれがここに居着いてもう二十年近くは経つからのう。」
「わぁ・・・そんなに前から・・・。」
が目を丸くして驚けば慈吾朗は「そうなんじゃよ」と頷いた。
「昔は、森の中で提灯や電灯の光を食っておったらしいがな、何かの折にこの別館に辿り着いて、そのまま定住死おったんじゃよ。せめて宿代を払ってくれればええんじゃが。」
「え?そういう問題?」
「ほー。昨日今日から始まった怪異じゃないとは思ったけど、かなり年季が入ってるわけね。」
「そういうことじゃ、眼鏡のキュートなお嬢さん。なので、わしも正直そんあんい期待はしておらん。無理をなさらず頑張ってもらえばそれで充分じゃよ。そちらのお嬢さんもまぁ、適当に断ってくれればいいのう。あまり大騒ぎされるのも面倒じゃからの。」
前半は無視されつつもは話題を振られて苦笑しながら頷く。そして慈吾朗は「それに」と稲葉のほうを振り向き下手くそなウインクを飛ばす。
「そう、それに、美しいお姉さんと酒を酌み交わせただけでわしはもう――痛い痛い痛い。」
「お祖父様?いい加減になさいませ?」
後ろにブラックなオーラを発した八雲が慈吾朗の髭を思いっきり引っ張っている。それを見た稲葉は「なんでこいうのにばっかり好かれるんでしょうか」とため息をついた。その時、
「――あ」
また、なんの前触れも無く、唐突に灯りが消えた。