らぶ・あたっくは近所迷惑!act8
火取魔の活動時間。
「なるほど。考えましたわね、天狗。」
「そっか・・・。凄いね、善人。」
浴衣姿で玄関先に集まったみんなが口々に奈良山を褒め称える。そんな中、だけは絶対に奈良山に近づこうとしない。顔を背けて勾陳の後ろに隠れている。まぁ・・・昼間のことを考えれば無理もないかもしれないけど。
「あれ、は褒めてくれないの?」
「ふあぁあああ///!」
音もなく近づいてきて勾陳の後ろに隠れているを覗き込んでくる。
「う・・・煩いわよ・・・!近寄るなー!!」
必死。
それに奈良山はちょっと不満そうにしつつ、肩をすくめて真一たちのもとに戻る。
「ほんと、よく思いついたな。」
真一に声をかけられて、浴衣姿の天狗は「どういたしまして」と答えて「俺的にはに褒めてほしかったんだけどなぁ」と呟いて笑いながら夜空を見上げる。
「昨夜、オーナーさんの話を聞いた時に、ちょっとね。あいつに光を追って移動する習性があるんなら、この手が通じるかなって。」
その視線の先には星空に向かって上昇中の、夜空よりも暗い一つの塊。元は建物一個を丸ごと飲み込むぐらいの大きさだったモノが、今は握り拳くらいの大きさにしか見えない。さらにその先には見えないけど火取魔の真上辺りには奈良山善人、基是害坊の使役する炎の鳥が飛んでいるはずである。
「周りの光を食い尽くした時点で、火取魔に触れるか触れないかのギリギリの場所に明かりを灯せば、そりゃああいつは光を食らおうとして動くわよね。そこまでは私も考えた。」
御崎が腕組みして感心したように呟くと善人がそのあとを続ける。
「ええ。あとは、その明かりを少しずつ移動させてやれば。」
「火取魔もそれを追ってずるずるふわふわ動き始める――ってことか。」
「そういうことです、先輩。」
奈良山は微笑みながら術を使った名残の天狗バージョンに返信したままの片腕でカリカリと頬を掻いている。その腕を興味深そうに眺めつつ、輝が尋ねる。
「ね、奈良山くん。あの火の鳥――松明丸だっけ?どのくらいと置くまで飛ばせるの?」
「制限は特にないですよ?今回は、火取魔が戻って来れない距離までは引っ張ってけって命令してありますから。うん、そうですね。」
善人は首を傾げていたずらを成功させた子供のようにいう。
「来月あたり、太陽の黒点が一つ増えるかも、ですね。」
「・・・マジで?」
真一が本気で驚く中、善人は「そろそろ夕食だね、ああ寒い」とか言いながら別館の中に入ってしまう。もちろん、勾陳の後ろにしがみついていたを拉致っていくのを忘れずに。
そして、の悲鳴が聞こえたのは、言うまでもない。