白銀の獣が紡ぐモノ 銀の瞳が映すもの編 act12
翌朝。シーヴァのお説教がひと段落ついたころ、物凄い勢いで扉を叩く音に意識をそちらに向けられる。
「うー・・・・・・な、なんだ・・・・・・?」
「わたしが出ます。」
「あ、エド、おはよー。」
シーヴァが対応するために扉に向かう後ろからがひらひらと手を振りながら現れる。既に身支度はばっちりだ(いつの間に)。
「・・・あぁ、おはよう、。」
大あくび。
シーヴァが扉を開けると転げるように飛び込んできたのはしっかりばっちり身支度を整えたトーヤ。
「うえ?トーヤ、おはよー。どーしたのー?」
「え、あ、お・・・おはよう・・・じゃなくて!」
わぉ。ノリツッコミ(笑)。
「話があるっ!」
仁王立ちで目を充血させて立つトーヤにちょっとびっくり。どうやら昨日シーヴァと別れた後一晩中起きていたらしい。
「・・・今かい?」
「今。すぐ。」
「着替える暇も、顔を洗う暇もくれずに?」
「うん。」
「・・・やれやれ。だ、そうだ、シーヴァ、。」
まだちょっと眠そうにベッドに腰掛けるエドワードは苦笑気味に言う。
「きーてあげなよ。せっかく話をしようっていうんだからさ。」
「そうですよ。わたしは厨房で、お茶の支度をして参ります。・・・寒いですから、暖炉の前でお話になるといいですよ。」
「わかった。・・・少々時間が早すぎるが、歓迎するよ。本当は、一昨日の夜に来るかと思っていたんだから。」
エドワードは裸足のままベッドから下りて暖炉の前のラグに腰を下ろす。トーヤもその隣に座り、は近くにあった椅子に逆向きに座って背もたれに顎を乗せている。
「それで?君の話を拝聴しよう。」
「あのさ・・・。そんなじゃなくて。」
「うん?」
「昨日・・・最後に俺を怒鳴ったときみたく喋ってくんないかな。」
「・・・ああ・・・。ざっくばらんに、ということかい?」
「うん。俺のことも、君じゃなくてお前でいい。」
「わかった。下町風にいこう。そのほうが、お互い楽だものな。」
「うん。」
「で?こんな朝早くから、何を言いに来た?」
その少しだけ和らいだ雰囲気に、はちょっと楽しそうににこにこと微笑みながら二人の話を聞く。
「昨夜さ。アトウッドさんと話した。」
「ああ。」
「あんたが寄越したんだろ、あの人のこと。」
その言葉にエドワードは少し肩をすくめるだけ。
「俺のこと・・・心配してくれてたんだ?」
そう言われて初めて、エドワードは少し照れくさそうな表情をする。
「心配じゃなきゃ、怒鳴ったりはしないだろう。どうでもいい奴なら、愛想良くして放っておくさ。」
「僕だって。適当にあしらって適当に放置するよー。」
エドワードに続き、も椅子に座って足をぶらつかせながらくすくすと笑う。
「それがわかんないんだ。何で俺のことなんか、心配すんの?知ってるよ。警察も学校もみんなも、俺が幽霊を呼んで、俺のこと虐めた奴らに仕返ししてるんだって疑ってるんだろ。」
「そうみたいだね。」
エドワードはあっさりとそれを肯定。も椅子の上でうんうんと首を縦に振る。
「だったら何で?あんたもホントは疑ってるんじゃないの、俺のこと。」
「でも、君は犯人じゃないもの。」
「もしお前が幽霊を呼んだのなら、素早くその場から逃げるはずだ。二度も三度も同じような場所で捕まるヘマはしない。それに、他の奴らはともかく、一年生をそこまで恨む理由は無いだろう。」
「・・・うん。」
「虐めを放置した学校への恨みという可能性もある。だが、それも、お前が昨日自分で消した。」
「俺が?」
「うん。君はお母さんの遺言でつらくてもここにい続けるために我慢してきたって言った。だったら自分の立場をあやうくするようなことはしないでしょう?」
とエドワードの自信に満ちた表情に一瞬、トーヤは言葉に詰まる。
「だから、幽霊を呼んでるのは君じゃないよ。君だって、僕たちに向かってはっきりきっぱりそう言っただろう。」
「うん。」
「でも、お前は幽霊の何かを知ってる。目的があって、幽霊が出現した場所にいた。そう思ったからこそ、昨日、お前と話しに行ったんだ。」
「うん。」
「どうして、幽霊が現れた場所に立っていた?『呼ばれた』と言ったその意味は?」
「・・・・・・・・・。」
静寂が、部屋を支配した。