白銀の獣が紡ぐモノ 銀の瞳が映すもの編 act16

エドワードとトーヤは大急ぎで身支度を整えると物凄い勢いで寮を飛び出した。とシーヴァも後を追う。
授業が始まっているため周りに人影は無い。しかし、校舎にたどり着いたとたん、トーヤの身体が強張る。
エドワードはそんなトーヤの肩を抱き、言う。
「堂々と入っていけ。お前は何も悪いことはしていないんだから。・・・ああいや、ひとつだけ大罪を犯してしまった。」
「え?お、俺が何したって言うんだよ。」
「遅刻だ。学生の本分をないがしろにした罪は重いぞ。」
「・・・自分だってサボってたっていってたじゃーん。人のこと言えないじゃん。」
「それはそれ。これはこれだ。」
「屁理屈。」
後ろからがちゃかしてもエドワードはどこ吹く風でにっと笑ってみせる。それをみてトーヤもぎこちなく笑い返した。
「・・・わかった。」
「それでいい。・・・授業が終わったら、話の続きを聞かせてくれるか?」
「うん。俺も聞いてほしいし。授業が終わったら、あんたの部屋に行く。えっと・・・」
トーヤはのほうに視線を向ける。
「ん?僕?僕もちゃんといるよ。君の話は興味深いからね。」
そう言ってもにっと笑い返す。
「それでは楽しみに待ってるよ。はい、そろそろ教室入って。なんなら僕とエドワードも中まで付き添おうか?」
トーヤは少しだけ迷って、しかし表情を引き締めて首を横に振った。
「いい。付き添いなしじゃ教室にも入れないなんて、言われたくねえもん。エドワードの言うとおり、俺、遅刻以外は悪くないんだから。・・・行ってくる!」
「ああ。」
「行ってらっしゃい。」
エドワードは促すようにトーヤの背中を軽く叩く。トーヤは一つ深呼吸して、ぎこちなくだが、歩き出した。

トーヤを送り出すと、三人は校舎の、トーヤのクラスの下まで移動する。そして、
『『おーい!』』
とエドワード。二人揃って外から声をかける。その声に生徒たちが窓のところに集まってくる。そして、
頑張れよ、トーヤ・ボールドウィン!
ファイトー!
「エドワード、と・・・・・・何を・・・。」
トーヤの顔が赤くなる。生徒たちはそんなトーヤと窓の外にいるとエドワードの姿を交互に見て呆気にとられている。
「授業を妨害して申し訳ない。先生!そして後輩諸君。僕の大切な友人を、よろしくお願いします。」
”友人”。その言葉にトーヤと同じ教室にいた生徒たちに動揺が走る。
「では、失礼。しっかり勉強しろよ、トーヤ!」
「またねー!」
動揺が収まらない一同を尻目に、たちは笑顔で手を振り、足取りも軽やかに去っていく。
「くすくすくす。やるねー、エドワード。」
だって。トーヤと同じ黒目黒髪なのに、愛想がいいとどうしてこうも差がつくもんなのかね。」
「ま、そんなもんだろ。」
そう言って肩をすくめるにエドワードは「でも」と前置きしてから言う。
「あまり、僕以外に笑顔を振り撒いて欲しくないな。君は僕のなんだよ?」
「だからいつから僕はエドのものになったんだろうね?」
にこにこと笑顔のエドワードに、は一つ、ため息を付いた。

ギャグのほうが書きやすいんだよなー・・・(二回目)。
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