白銀の獣が紡ぐモノ 銀の瞳が映すもの編 act18
「この学校の生徒さんが、墓荒らしを?まさか、そんな。」
部屋に戻ってきたエドワードとの話を聞いたシーヴァは信じられない様子で言った。どこか憤ったような様子でエドワードも言い返す。
「僕だって目を疑ったさ。貧富の差があるといっても、この学校の生徒になれた以上、墓を荒らさなければならないほど困窮している者がいるとは思えない。でも・・・プライスが見せてくれたピンバッジは、確かに我が校のものだった。」
「どっちにしろ墓荒らしとかサイテー。」
エドワードが脱ぎ捨てたジャケットにブラシをかけながら、二人の言葉にシーヴァは顔をゆがめる。
それからしばらくその墓荒らしの話をしているとシーヴァは何かを思い出したようにエドワードに駆け寄る。
「どうした?」
「昨夜、わたしが戻ったとき、あなたはもう眠っておいででした。今朝は今朝で様への厳重注意とトーヤ様が早くからお越しでしたので、すっかり失念していたのですが・・・お話しようと思っていたことあったのです。昨夜は幽霊がでたという話もありませんでしたから、たいしたことではないと思っていましたが、今のお話を聞いた後では・・・。」
エドワードはイライラして、シーヴァの上着の袖を掴んだ。
「何があったんだ。早く聞かせてくれ!」
「エド、落ち着け落ち着け。」
が苦笑しながら宥める中、シーヴァは上着を掴まれたままエドワードの傍に肩膝をつく。そして少し緊張した表情で口を開いた。
そしてシーヴァからもたらされた情報は、夜中に慌てて戻ってくる複数の生徒を見たというもの。その生徒の特徴が
「・・・赤毛・・・。」
「あ、それ僕も見たかも。」
エドワードはその言葉にに詰め寄る。
「間違いないな?それはどんな赤毛だった?というか、なんでは夜中に出歩いてたりする?」
「今はとりあえずその辺は置いといて。」
横にどかすしぐさをする。
「そーだね。かなり綺麗な赤だったと思うよ。うん。」
「でかした、!シーヴァ!」
エドワードは勢いよく立ち上がる。シーヴァとも困惑顔で立ち上がる。
「と仰いますと・・・。」
「二時を過ぎた頃といえば、プライスの話と時刻が合う。つまり、あいつが幽霊を諦めて墓地に行き、墓盗人を取り逃がしたのが、二時少し前くらいだと言っていた。墓地からここまで、走れば十五分ほどだろう。」
「ということは、まさか、わたしとトーヤ様と様が見たのは、」
「墓場から逃げてきた盗人たちの可能性が高いということだ。」
「そんな・・・。では本当に、犯人はこの学校の、しかもこのエルム寮の生徒さんということに?」
「ということになる。しかも、燃えるような赤毛と、大柄な体の持ち主だ。」
「・・・エドが生き生きしてる・・・。」
の呟きどおり、エドワードの顔はこれまでの穏やかな表情はどこへやら。獲物を捉えた狩人のような鋭い表情になっていた。
「このエルム寮に、その条件を満たす奴はひとりかいない・・・バーンズだ。あいつめ、今度こそ逃がさないぞ。」
「エドワード様、では、」
「行くぞ、シーヴァ、。まだ学校の近くにいるはずだ。プライスを捕まえて、今の話を聞かせる!」
「エドワード様ッ!お待ちくださ・・・ああ、もう、あの方は!」
「・・・頑張れ、シーヴァ。」
もクローゼットにしまったばかりのジャケットとコート、それにステッキを持ってエドワードを追いかけるシーヴァのあとに続いた。