白銀の獣が紡ぐモノ 銀の瞳が映すもの編 act19
時刻は変わって深夜。消灯時間が過ぎてからエドワードとトーヤは噴水のすぐ近くの茂みの中にいた。
あの後プライスにとシーヴァのみたという人物の情報を提供した。
そのおかげでプライス刑事は墓泥棒捜査に熱中していて幽霊のほうは頭の中から抜け落ちているらしい。幽霊に会って話をするには今夜が絶好のチャンスなのだ。
「今夜、幽霊が現れると思うか?」
エドワードの問いかけにトーヤは素直に答える。
「わかんない。声が聞こえるまでは、俺にもあの人が来るかどうかはわかんないんだ。」
「そうか・・・。」
その後はバーンズの悪口大会(笑)がしばし続いたあと、
ガサッ。
「・・・・・・・・・!」
エドワードとトーヤは突然背後で聞こえた音に、ギョッとして身構えたが、そこにいたのはバスケットを持ったシーヴァとだった。
「な・・・何だ、君たちか、、シーヴァ。気配を殺して近づくなよ。」
「そんなことしてないよ。消せるけど、必要ないでしょ?幽霊は出るときは出るし。お喋りに夢中で気付かなかっただけだよ。ほら、差し入れだよ。」
そう言ってとシーヴァはバスケットを開ける。いい香りが漂い、二人の顔が輝く。
「夜食か!」
「ええ。サントイッチとお茶です。急いで持ってきましたから、お茶はまだ熱いですよ。どうぞ。体が冷えたでしょう。」
シーヴァがポットからサーブしてくれたお茶を飲み、が手渡してくれたハムとキュウリのサンドイッチで腹も満たして、少し落ち着いた気分になる。
「・・・・・・そろそろ、幽霊が出ると言われる時刻ですね。」
シーヴァは、懐中時計の針に触れ、そう言った。エドワードは軽い落胆の滲んだ顔で頷いた。
「今日は、もう現れないかもしれないな。まあ、初日で会えると思うのは、虫が良すぎるかもしれないさ。またあし・・・。」
「「あっ!」」
トーヤが小さな叫びを上げ、立ち上がりそのままフラフラと噴水のほうへ近づいていく。同じように叫びを上げたも一点を見つめ、トーヤの後を追う。
「トーヤ!まで!何か感じたのか?」
寝ぼけているような頼りない足取りで噴水に向かって歩きながら、トーヤは小声で呟く。
「聞こえる・・・。悲しい声。あの人が・・・来るよ。」
「何だって?」
エドワードとシーヴァは耳を澄ませるが風の音と噴水の水音しか聞こえない。
「・・・は・・・聞こえるのかい?」
「うん。聞こえるよ。女の人。泣いてるね。」
トーヤのようにフラフラとした足取りではなくしっかりとした足取りでトーヤの後に続き、真剣な表情で一点を見つめる。
「・・・来る・・・。」
が呟くとトーヤもその通りだというように頷く。そのトーヤの瞳は銀色に輝き、の瞳と髪もまた、白銀に輝いていた。
「トーヤ・・・・・・。」
「ほら・・・あそこ。」
トーヤが指差すほうにぼんやりと人影が浮かび上がってきた。
黒いマントに包まれた体はそのラインから女性であると分かる。フードからこぼれる長く、美しい金髪はそれ自体がうっすらと輝き、緩やかに波打っている。
「エドワード様・・・!」
「ああ。ついに、幽霊とのご対面だ。」