白銀の獣が紡ぐモノ 銀の瞳が映すもの編 act21

「指輪!最後に確かにそう言ったぜ、あの人!」
トーヤの言葉に、エドワードも頷く。
「そして、エルシーと名乗った。そうだったな。」
「うん。確かにそう言った。すごく、悲しそうだった。」
はシーヴァを手伝って向かい合って座ったトーヤとエドワードの間に置いたバケツに、熱めの湯を注ぎ足しながら言う。
長時間外にいてすっかり凍えてしまったトーヤとエドワードは、部屋に戻るなり速攻で暖炉の前に椅子を置いて座った。そして膝までズボンをまくり上げ、かじかんだ素足をバケツの湯に浸けて温めている真っ最中。
トーヤはバケツの湯の中で足の指を動かしながら心配そうな顔で呟くように言う。
「凄く思い詰めてたよ。俺の声も、の声も、あんまり聞こえてないみたいだった。あれじゃ、普通の人が何言ったって、あの人には全然届かないんだろうな。・・・色んな死人と喋ったけど、あんなに何かを強く求めてる人はいなかった。」
「そうだな。幽霊と話せるお前や、自称”神の通ずる力を持つ獣”「自称言うな」のの力をもってしても、ほとんど会話になっていなかった。「え?無視?」しかし、大きな手がかりが得られたじゃないか。」
エドワードが明るい表情で指を折りながら話を続ける中で、スルーされたはちょっと凹み(苦笑)。いっそ耳と尻尾見せたら信じるかなとかちょっと思ってしまう。
「エルシーという名前。そして若い女・金髪・緑の瞳・指輪。たくさんのキーワードだ。おそらく幽霊は、この辺りで暮らし、死んだ女だ。明日の朝、さっそく村役場へ行って調べよう。戸籍を調べていけば、きっと幽霊の正体が分かる。」
「あ、それ、俺も行きたい!」
「駄目だ。」
「いけません。」
「駄目だよ。」
「な、何だよ三人して。」
エドワード、シーヴァ、と異口同音に同行を却下され、トーヤは子供のように膨れる。暖炉に薪を足し、部屋を暖めながら、シーヴァはいかにも保護者のように言う。
「あなたには、お勉強があります。調査は、わたしとエドワード様と様でできますから。」
「でも!幽霊・・・エルシーから俺も情報聞き出したのに!」
「それはわかってるよ。だけど、校長先生の依頼で動いてる僕たちが、生徒である君に授業をさぼらせるわけにいかないからね。」
「う、うー」
「わかったことはちゃんと知らせるよ。だからトーヤは授業に行きなさい。」
「そうだ。せっかく今日、胸を張って授業を受けてきたんだろう?明日さぼったら、何だあいつはと余計にバカにされるぞ。」
の言葉にエドワードのダメ押し。トーヤはしぶしぶと言った表情ながらも頷く。
「わかったよ。ちぇっ、俺だって一緒に頑張りたいのにさ。」
「トーヤは十分に頑張ってるよ。さっきも幽霊に凄い真剣に話しかけてたのは、立派だったよ?」
「ホント?」
「ええ。あなたもそうお思いでしょう、エドワード様?」
「ああ。見直したぞ、トーヤ。今朝、教室の前で半泣きになっていた奴と同一人物とは、とても思えない。」
「半泣きになんか、なってないっ!」
「ははは、窓から僕を見下ろして、涙目になっていたくせに。」
ムキになるトーヤにエドワードは楽しそうに笑う。むくれたトーヤはつま先でエドワードのほうに湯を跳ね上げて攻撃。
「わっ、何をする!」
「やなこと言うからだ!」
「本当のことじゃないか。」
「・・・わぁ・・・掃除が大変だぁ・・・(苦笑)。」
そんあことを言いつつ、子供みたいにじゃれあう二人を見て、もシーヴァもなんとなくほっとした気持ちになった。
主人公ちゃんはまだ本性さらしたことがないので信じてもらってないのが悩みです(苦笑)。
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