白銀の獣が紡ぐモノ 銀の瞳が映すもの編 act22
そんなこんなで床を水浸し寸前になるところでシーヴァはタオルを取りに走る。
そのあとはエルシーの呟いた言葉についての疑問点やらナイフについてやら被害者の特徴についての推理をしていった結果、
「うーん。あと、外見でパッと見てわかることっていえば・・・」
「「「「髪!」」」」
素晴らしい勢いでハモった。
エドワードは思わず立ち上がり手を叩く。
「そうか!アディントンも、バーンズも、ファーガスも赤毛だ!スペンサーも、確か髪は赤かった。わかったぞ。エルシーがあのナイフで襲いかかった連中は、いずれも赤毛の持ち主だ。」
トーヤは自分の黒髪をいじりながら言う。
「そっか。それで俺たちの頭を順番に見て、『違う』って言ったんだ。俺たちの誰も、赤毛じゃないから。・・・って、待って、それじゃ!」
トーヤもベッドからぴょんと立ち上がる。
「幽霊のエルシーは、この学校の、赤毛の生徒を襲った。それはたぶん、あの人が探してる『あれ』を取り返すためで・・・その『あれ』ってのは・・・」
「誰かにもらった、大切な指輪。」
「つまり、この学校の赤毛の誰かが、エルシーの指輪を盗んだってこと?」
「そういうことになるな。・・・幽霊。赤毛。指輪。なるほど。だんだん、それぞれの要素が一本につながってきたぞ・・・。」
エドワードの顔がとてつもなく楽しそうで、それを見ているは苦笑する。
エドワードはしばらく部屋の中を何か考えるように歩き回っていたがいきなりぴたりと動きを止めたと思うとトーヤに向き直る。
「そうと決まったら、今夜は早く寝ろ。」
トーヤはエドワードのその言葉に呆気に取られたように言い返す。
「そうと決まったら、の『そう』が何なのか、全然わかんないんだけど。」
「今はわからなくていい。僕の推理が明日確実になったら、今日と同じく夜中に出かけることになる。だから、それに備えて今夜はぐっすり寝るべきだ。もちろん、、君もね。」
「その、僕の推理っての、聞かせてくれたっていいじゃん。」
はこれは何を言ってものらりくらりとかわされると思ったのか、大人しく頷くが、トーヤはしつこく食い下がる。
「明日の放課後にな。」
「何だよ、ケチ!」
「無駄だよトーヤ。エドはこうなったら頑固だ。」
その言葉にエドワードはちょっとむっとしながらも苦笑しながらトーヤに言う。
「的はずれな推理だったら恥ずかしいだろう?だからだよ。」
「うー。じ、じゃあ、放課後、必ずここで待っててくれよ?俺のこと、のけものにするの。なしだからな!俺、自分にかけられた疑いは、自分の手で晴らしたいんだから。」
「わかっているさ。だからこそ、もう寝るんだ。・・・いいな?」
「・・・わかった。」
不承不承頷いたトーヤの肩を叩いてエドワードは言う。
「部屋まで送ってやってくれ、シーヴァ。途中で誰かに行き会ったら、僕の捜査に協力してもらっていたと説明を。」
「わかりました。・・・では、参りましょうか、トーヤ様。」
「うん。・・・じゃあ、おやすみ、エドワード、。」
「おやすみ。また明日。」
「おやすみー。」
シーヴァと一緒に部屋を出て行くトーヤを見送るとエドワードは窓の外を眺める。
「明日の夜だ。・・・明日の夜、必ず片を付けてみせるぞ。」
そう、呟くエドワードをはくすくすと面白そうに笑いながら眺めていた。