白銀の獣が紡ぐモノ 銀の瞳が映すもの編 act27
バーンズはシーヴァに気付けの酒を飲まされて目を覚ました。そして自分が命拾いしたことが分かってからも恐怖でしばらく口が聞けずにプライスの部下に付き添われて警察署へと連行された。
「あとは任せとけ。仲間も割れたし、盗品もわざわざ持参してくれた。バーンズの奴は相当参ってるようだが、駄目押しに仲間と一緒にガツンとくらわしておく。ブンヤのほうもちゃんとやるさ。自分の首を守るためにな。・・・ってわけで、てめえらは、帰った帰った。」
そう言ってプライスは四人に背を向けた。しかし、彼は数歩歩いたところで足を止めてクルリと振り向いた。
「おい、金髪。それから、黒髪のガキに・・・人外。」
「え、僕人外で一括り?!」
素晴らしく失礼な呼び方で呼ばれて、それでも律儀に振り返るエドワード、トーヤ、の三人に、プライスは背筋を伸ばして敬礼する。
「ご協力、深く感謝するッ!」
思いがけない行動に三人は顔を見合わせて、そして笑顔になる。
「どういたしまして。」
「ましてっ!」
「どうってことないですよ。」
少し崩れた敬礼を返す三人に、プライスも無骨で、そして照れくさそうな笑みを返した。
次の日、エドワードとシーヴァ、は授業が始まって、生徒たちが消えるのを待ってからバルフォア校を去ることにした。コレット校長には、昨夜のうちに事件の報告を済ませた。後のことは責任を持って対処すると校長は約束してくれたので、三人は安心して去ることができる。
正門前にはすでに馬車が到着していた。
「懐かしの母校ともお別れか。さあ、行こう、シーヴァ、。」
エドワードがそう言って馬車のほうに行こうとするが、シーヴァとは立ち止まって笑う。
「エド、お別れを言う相手がもうひとりいるみたいだよ?」
「あ?」
振り向いたエドワードの視線の先には校舎を飛び出してこちらに全力疾走してくるトーヤの姿。
「わたしは先に行って、馬車に荷物を積んでおきますから。どうぞごゆっくりお別れを。」
「あ、僕も先行ってる「も残る。」ぐえ。」
シーヴァについて行こうとしたはエドワードに襟首を思いっきり掴まれた。・・・首が絞まってますよ。
「はあっ・・・はあ、あんたら・・・意外と薄情。じゃん。何も言わずに、行くなんて。」
エドワードとの前に立って肩で息をしながら抗議をする。エドワードはそんなトーヤにふっと笑い、は思いっきり近くまで近寄って
ゴイン!
「ぐぉ!」
でこに頭突きをかました。
「ははは。トーヤ、また授業を抜け出したな。困った奴だ。」
「〜〜〜っ!だって、あんたらが出てくの、見えたんだもん!」
「『もん』とか言われても可愛くないぞー。」
けらけらと笑うにトーヤは袖で額の汗を拭きつつ、赤くなった額を押さえて悲しそうな顔で二人を見た。
「行っちゃうのかよ。」
エドワードは肩をすくめてふっと笑う。
「仕事が終わったからな。帰って、次の仕事に取りかかるさ。」
「僕もジェイドの世話しなきゃ。」
絶対寝室物凄いことになってるよ、あのひと。
と、ちょっと遠い目をして言えばエドワードもトーヤも苦笑する。
「・・・だよな。あの、俺・・・。」
もじもじするトーヤに、エドワードはステッキをに預け、右手を差し出す。
「今回、事件を解決できたのは、お前と、のおかげだ。ありがとう、トーヤ。会えて良かった。」
「俺も。・・・あのさ、俺!」
エドワードの手を握り返し、トーヤはしっかりとエドワードを見据える。
「ありがとうな。俺のこと怒ってくれて。俺・・・もう、絶対逃げたり、人のせいにしたりしないから。ちゃと、自分で考えて、自分で歩いていくから。」
そう言い切ったトーヤはもう、大丈夫だろう。強い光を宿した瞳に、エドワードとは思いのこもった一言を投げかける。
「・・・頑張れよ。」
「でもあんまり無理しちゃ駄目だよ?」
の言葉にトーヤは苦笑する。
「あんたも。きっと有名な探偵になってくれよな。も。」
「近い将来、新聞で僕の名をしょっちゅう見ることになるさ。」
「僕は探偵じゃないけどねー。」
三人はしっかりと握手を交わした。そして今年初めての白い雪がちらつく中、別れの挨拶を交わした。