白銀の獣が紡ぐモノ 白き古城に眠るもの編 act7

「どうしました!開けてくださいッ!」
夫のものらしき悲鳴が続く客室の扉を叩くがエドワードの声に応じる気配は無い。扉を開けようとしても鍵がかかっているようだ。
「開けてください!」
「どうしましたッ。」
声を聞きつけてロレンス氏も駆けつけてきた。・・・寝間着にジャケットという少々(というかかなり)奇妙なかっこうではあるが。
「中でなんかあったみたいです!合鍵は?!」
「申し訳ありません、この部屋は中からかんぬきをかける仕組みになっておりますので、合鍵はありません。」
「くそッ!」
「古い城です。二人がかりならかんぬきを壊せるかもしれません、エドワード様。」
「よし。ロレンスさん、すみませんが扉を少々壊すことになります。」
「かまいません、お願いします。」
それを合図にはエドワードとシーヴァの邪魔にならないように一歩後ろに下る。トーヤもの隣に並ぶように下る。
「行くぞ。」
「はいっ。」
エドワードとシーヴァが扉に体当たりする。分厚い木の扉が軋み、音を立てるが一度では壊れない。
「もう一度だ!」
二人はたちが固唾を呑んで見守る中、何度も体当たりを繰り返す。
バキッ!
「うわあっ!」
「あっ。」
十数度目の挑戦で、ついにかんぬきの金具が外れて扉は勢いよく開いた。おかげでエドワードとシーヴァは思い切りスライディングする形で部屋の中に雪崩れ込んだが。
「うう・・・、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・大丈夫?」
「・・・だ、大丈夫ですか、エドワード様。」
「僕は大丈夫だ・・・大丈夫じゃないのはシーヴァだろう。」
そういって立ち上がり、シーヴァに手を貸すのはいいが、幼い頃の赤っ恥をさらりと暴露されてちょっとだけエドワードの眉間に皺が寄った。はちょっと噴出している。
しかしそれも瞬間のことですぐに部屋の中の様子を確認する。獣の瞳を持ち元々夜行性といっていい習性を持っているはエドワードたちが暗がりで戸惑う中、すたすたとわずかに声のする寝室のほうへと向かう。エドワードたちも燭台を持っての後を追い、勢いよく扉を開ける。そこから聞こえるのは年老いた男のすすり泣く声だけ。
「どうしたんだよっ、爺さん!」
「あ、トーヤ、待っ・・・、」
静止しようとしたを振り切りトーヤは寝室へ駆け込む。仕方なく、、エドワード、シーヴァも寝室の中へ入る。そこには床の上にへたり込んだ老人の姿。
「爺さん、しっかりしろっ。どうしたんだ!」
「誰かが・・・誰かが入ってきて、家内を・・・家内を・・・、」
「奥さん!?」
トーヤは寝台のほうに首を巡らせる。そちらへ近づき、灯りを差し向けたエドワードとシーヴァは息を呑み、絶句し、は眉間に皺を寄せ、険しい顔をしている。
窓際の寝台に横たわる老婦人は、驚愕の表情で目を見開いたまま、ピクリとも動かなくなっていた。
「・・・・・・・・・。」
老婦人の口元に頬を寄せ、手首に触れて脈を確かめたシーヴァは、沈痛な面持ちでかぶりを振った。
「い、い、いったい何が・・・・・・、」
「・・・すぐに警察を読んでください。この女性・・・もう亡くなってる。」
「ひ・・・ひいッ・・・、」
「早く!」
の言葉に脅え、エドワードの声に鞭打たれるようにしてロレンス氏は部屋から走り出て行った。
は寝台に横たわる夫人の瞳を閉じさせ、悔しそうに唇を噛んだ。
シリアス!
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