その後。のことは綺麗に無視されたまま次の日八時過ぎ。書斎のソファで仮眠を取っていたトーヤはシーヴァに起こさた。因みにエドワードとは既にホールに集合。っていうかはエドワードに巻き込まれた感が否めない。
「な、何だ!何で貴様らがここにいるんだッ!」
なんだか聞き覚えのある声がホールに響き渡った。
「それはこっちの台詞だっつの!何であんたが来るんだよ!」
それに応えるトーヤの叫び。・・・うん、少し声量抑えよう。
「やあ、プライスさん。お互い、こんなところで偶然出くわすなんて、まさに運命としかいいようがないね。」
「はは。プロポーズでもしとく?」
「あほなこと言うのはこの口かなー?」
「いひゃいいひゃい・・・っ!」
どこの漫才ですか。
「馬鹿野郎、それこそこっちから願い下げだ!てめらと運命なんてたいそうなもんで結ばれてたまるか。腐れ縁と言え!え、俺はな。ついにこの間ロンドラ市警に移籍したんだ!」
「「移籍?」」
エドワードとが揃って首をかしげる。
「ほ、ほらッ。例のバルフォア校の幽霊事件。幽霊はともかく、あの悪ガキどもの首根っこを掴んだ功績を買われてな。ありがたいことに、警視総監殿から、地方警察に置いておくのは惜しいと、ロンドラ市警に栄転させていただいたんだ!」
「なーんだ、エドワードの手柄で出世したんじゃん。これで二度目だな、あんた。」
「う、うるさ、このカラス小僧め!」
「だってホントのことじゃん。それに、刑事が人種差別していいのかよ!ロンドラ日報に投書しちゃうぞ。なー。」
「ぐっ・・・、」
「え?そこで僕に振るんだ。僕は別にどうでもいいけどなー。ぶっちゃけ僕”人”じゃないし。」
はい、そこは突っ込み禁止です。そんなことしてたらきりが無い。
「とにかく!今の俺は、ロンドラ市警刑事課に所属している。肩書きは相変わらず警部補だ。い、いくら昔なじみでも、捜査では手加減せんからな!お前らには、これからみっちり話を聞くから、そのつもりでいろい!」
なんか後半はどっちかというと部下達に聞かせるために大声で言った感が否めない発言だったが、大見得を切ったプライスは、ようやく余裕を取り戻したらしく、部下達に現場検証を始めるよう命じた。そしてプライスは憔悴した様子のロレンス氏をギョロ目で睨みつけてなんかもういろいろと警察らしいことをしていた。まぁいつも警察らしくないわけではないけど(笑)。
「・・・元気だなぁ・・・。」
がちょっとと遠い目をしつつ、昨日の晩から感じている”何か”の正体を突き止めようとしているうちになにやら情報収集をしていたらしい。そんなことをしていると勢いよく聴取のために用意された食堂の扉が開いた。・・・扉が壊れないかちょっと心配になるほどだ。当然、姿を見せたのはプライス警部補である。
「よしっ、交代だ!お前ら、事情聴取をするぞ。四人まとめて、とっとと来やがれ!」
「・・・職業柄仕方ないとしてもあの超上から目線はどうにかならないものかなぁ・・・(苦笑)。」
「・・・・・・仕方ないよ。では、失敬。」
は苦笑し、エドワードは立ち上がり、話を聞いていた巡査に目礼した。そしてさりげなくトーヤとに耳打ちする。
「夜に話した、トーヤの瞳が銀色に光った話と、が何か感じたことは、伏せておけ。」
「え?何で?」
「妖し云々の話をしても、あの頭の固い刑事殿は混乱して怒り出すだけだよ。・・・その可能性は、取り合えず僕達だけで探ったほうがいいかもね。」
「・・・何か、あてがあんのかよ。」
「まあね。・・・とにかく、プライスには余計なことを教えすぎないほうがいい。事情説明は僕に任せてくれ。」
「あー、わかった。あんた、あのオッサンのあしらい、上手そうだもんな。俺は黙ってる。」
エドワードの言葉に苦笑しながらそれでもエドワードの話術を知っているトーヤは了解の意を示す。
「それでこそ、有能な助手だよ。」
「おいっ、何をグズグズしてやがる!早く来い!」
「今行くよ。」
プライスの怒鳴り声に皮肉っぽく眉を上げて苦笑し、エドワードはトーヤの背中をポンと叩き、の手を握って、シーヴァを従えて食堂へ向かった。
プライスさんとトーヤの漫才みたいなやり取りは大好きです。
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