白銀の獣が紡ぐモノ 白き古城に眠るもの編 act11
客室に全員が揃うと村で唯一の医者だという老人が検死の結果を報告する。
死亡時刻は午前零時前後、目立った外相は無く、年齢を考えると心臓麻痺ということだろうという。
それに対してプライスは落胆したような表情になりくだらないと言い出し、それをエドワードがなだめるという何時ものパターンの出現。・・・何時も通り過ぎてどうしようもない。
「ねぇお医者さん、さっき「奇妙な所見がある」とかなんとかプライスさんの部下が言ってたんだけど?」
「そうじゃ。あんたがた、わしの話はまだ終わっとらんよ。お嬢ちゃんの言うとおり、奇妙な所見があると言うたでしょうが。」
「おっ・・・そういえば。」
「これは失礼。」
の言葉によりたしなめられ、プライスとエドワードは口を噤む。医師は満足げに数回頷くと、老婦人の前髪を掻き上げた。
「これを、見ていただきたい。」
そこには円に×を重ねたようなシンプルだが見慣れない、奇妙な模様が浮き上がっていた。それこそ、焼印でも押したかのようにくっきりと。しかし、それは後から描かれたものでも、皮膚を傷つけてつけたものでもないことは皮膚に触れてみればすぐにわかった。
「何だこりゃ。お前、わかるか?」
「見当もつかないね。・・・先生はご存知ですか?」
「・・・皆目わかりませんな。というより、この模様がいったいどのような機序でこうも明瞭にみえるのか。まずはそれが謎です。・・・まあ、もっとも。損傷でない以上、これが死因に関係しているとは思えませんがの。」
医師の言葉にプライスの眉間に皺が寄る。そしてぐちぐちと文句を言っていると今まで大人しくしていたトーヤが興味をそそられたらしく前に出てきた。もそれに続く。
「・・・この模様だよ。何か見覚えが・・・?」
と、突然トーヤが胸元を押さえ、顔色から血の気が引いて行く。その表情は苦悶の色が浮かぶ。そしてそれに続くようにの様子も、トーヤほどではないにしろおかしい。
「トーヤ??どうした。」
「トーヤ様、様?」
なにやら様子がおかしいことを心配してシーヴァもベッドを回り込むようにして三人に近づく。
「何か・・・気持ち、悪・・・っ・・・、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・めまいが、する・・・、」
瞬間、トーヤとその場に崩れ落ちた。
「トーヤ様ッ!」
「!」
トーヤはシーヴァに、はエドワードに抱きとめられた。抱きとめられた二人は、それぞれの腕の中で気を失っていた。