白銀の獣が紡ぐモノ 白き古城に眠るもの編 act14
「これをご覧ください。」
シーヴァの照らした壁面には、細長い鎖が取り付けてあった。その先はだらりと床に垂れている。
「・・・銀の・・・鎖・・・。物凄い力で引きちぎられた感じだね。つい最近だ。」
「ちぎられた、だと?おっ、」
「ちょっと見せて。」
「トーヤ、気をつけて。」
の言葉に驚きの色を隠せないプライスを押しのけてトーヤは鎖に触れ、小さく身震いした。
「トーヤ?大丈夫かい?」
「ん、平気。・・・さっきより強く、魔物の気配を感じる。」
「何っ。魔物ってのがここにいるのか!?」
「いないよ。この鎖はその魔物をここに繋いでおくためのものだったんだ。それが、引きちぎられた。」
はトーヤの隣にしゃがみこみ、鎖を持ち上げて一同に見せる。
「そんな細くて華奢な鎖にか?魔物っていうくらいだ、力も強いんだろう。何だって、最近まで千切れなかったんだよ。」
「尤もなご質問ありがとう。」
「普通の鎖じゃないからに決まってんじゃん。」
とトーヤがプライスに向かって説明する。
「このへんからは、凄く強い、清らかな力を感じる。」
「うん。今時珍しいぐらいの澄んだ気だね。癒される感じ?」
壁側の鎖に触れ、心地よさそうな表情をしたと思えば、千切れた先端に触れ、顔をしかめる。
「でも、こっち側からは・・・嫌な波動を感じる。」
「何者かが鎖を穢して・・・それによって力が弱まり、魔物が鎖をちぎった。」
「何者かが?何者って誰だよ?」
「そんなの、俺たちが知るかよ。」
例の如くおなじみな口論が始まる中、エドワードは険しい顔でトーヤが離した鎖を拾う。そして何か小さく呟いたようだったが、それはトーヤとプライスの口論にまぎれて、以外の者の耳には届かなかった。
「・・・エド。」
の声にエドワードは頭を振り、鎖をすべり落とす。
「ここにはもう、何も無いようだ。・・・魔物はかつてここに封じられていたが、今はいない。ということは、おそらくかつてのねぐらである森に潜み、深夜に人間の生気を求めて此処に戻ってくると考えるのが妥当だろう。」
エドワードはそう言って一同の顔を見回した。皆、一様に頷く。自分も頷き返して、エドワードは言葉を続ける。
「だとすれば、今夜も魔物がやってくる可能性がある。真夜中までにはまだもう少し時間がある。これからのことw、食堂に戻って検討しよう。」
エドワードの言葉にトーヤが我先にと地下室を飛び出し、その後ろにプライスが続く。
「エド、僕等も行こう。」
「・・・ああ。」
に促されて地下室を出る。一階に戻ろうと階段を上がろうとして、エドワードは床に落ちているものを見つけた。拾い上げてみるとそれは二つ折りにされた小さな紙片。だがそこに書かれていた文字を読んでエドワードの顔色が変わる。
「エドワード様どうかなさったんですか?」
怪訝そうなシーヴァの声が階段の上のほうから聞こえてくる。エドワードは反射的に紙片を上着のポケットに突っ込み、
「何でもない。今行く。」
できるだけ平静を装った声で言うと、シーヴァの後を追い、階段を駆け上がった。だが、そんなエドワードの様子を、だけはしっかりと見ていた。