白銀の獣が紡ぐモノ 白き古城に眠るもの編 act16
ホールを駆け抜け、階段を駆け上がり客室に飛び込んだとエドワードが見たのは黒い襤褸切れを被った魔物の姿とそれと対峙する三人の姿だった。
プライスよりも大きな魔物は、二足歩行では有るものの、到底人間と呼べるような容姿はしておらず、地下に繋がれていた名残の銀の輪と短い鎖が右足に下っていた。
『グルルルゥゥ・・・、』
狼のような口から、獰猛な唸り声が漏れる。
『・・・アグネス・・・コロシタ・・・ユルサナイ、ニンゲン、ユルサナイ・・・!』
「てめえに許してもらう必要はねえ!化物め、これでも喰らえッ!」
プライスは怒鳴ると魔物の腹めがけて発砲した。
『グアオ!』
魔物は咆哮し、弾が命中した腹部からは灰色のドロドロとした体液らしきものが滴り落ちる。
「やった・・・!」
「まだだ!」
声を上げるプライスには警戒するように叫ぶ。
『グ・・・ウウウゥゥ、』
やはり魔物は倒れず、それどころか怒りの声を上げるとプライスに襲い掛かる。
『コロス・・・コロス!』
「うおわあっ!」
「っ!プライスさん!」
魔物に首を鷲づかみにされ宙吊りにされる。プライスはそれでも抵抗するが、やはり少しも緩むことはない。シーヴァとトーヤがプライスを助け出そうと挑むが敵うはずもなく、床に叩きつけられた。
「トーヤ!」
その姿と、の叫びに我に返ったエドワードは足元に倒れ伏したトーヤの身体を抱き起こした。その頬は腫れ、唇が切れて血が滲んでいる。
「どこ行ってたんだよ、二人とも!寝室にいたら、突然あの魔物が来て・・・駄目だよ、あいつ、何言ったって聞きゃしない!幽霊と全然違うよ、」
「わかってる。・・・待て、行くな!」
「待てないよ!このままじゃ、プライスさんが窒息しちまうって!」
「わかってる。だけど、普通にぶつかっても、あいつには通じない。」
そういいながらは魔物を見つめる。その姿が徐々に、バルフォア校で幽霊と対峙したときのように銀の髪、銀の瞳の姿となる。エドワードも大事に抱えていた包みを床に置いた。
「今こそ、これを使うべきときだ。」
そう言って布を解くエドワードの、その布の中から出てきたものから感じる波動に大丈夫だという確信を持ったはそのまま魔物へ突っ込む。それにあわせて後ろからトーヤも魔物へ向かって突進してくる。そしてそのまま突撃したトーヤはあっけなく振り落とされ、さらに魔物に踏みつけられる。
「くうッ・・・!」
「トーヤ!」
「トーヤ様!」
獣の姿になればもう少し力を発揮できるが、まだそんな勇気もないは葛藤し、魔物に踏みつけられるトーヤに慌てる。
「エド!」
が叫んだ瞬間、
パアアアアアア
包みから出て来たもの―剣の柄―から銀色の眩い光が迸った。