白銀の獣が紡ぐモノ 銀の瞳が映すもの編 act5
だが、安らかな眠りは三時間と保なかった。
最初に気付いたのはだった。異様な空気を感じ取ったがパチリと目を覚まし、窓辺へと駆け寄る。窓から外をうかがっていると部屋の扉がノックされた。恐る恐る扉を開ければ学園の教師が立っていた。
―生徒がまた襲われた―
そう言う教師に頷いて、はまずシーヴァを起こし事情を話した。シーヴァは持ち前の機転の速さでジャケットを羽織ると今度はエドワードを起こしにかかった。
「・・・さま!エドワード様ッ!」
緊迫したようなシーヴァの声に、いつもは寝起きの悪いエドワードもこのときばかりは即座に目を覚ます。
「何だ、どうした?」
「さっき、教師が報せてきたよ。生徒が、幽霊に襲われて軽い怪我をしたんだって。今校長室に「行くぞ!」人の話は最後まで聞け!」
そんなの叫びもお構いなしにエドワードは燭台を掴むと部屋を飛び出していった。
「ああ、待ってくださいエドワード様!上着を・・・。」
スリッパとガウンをひっつかんでエドワードの後を追うシーヴァを、は呆れたように見送って一つため息を付くと、
「・・・・・・僕も行くか・・・。」
そう呟いた。
校長室に到着すると既に二人は中で襲われた生徒から事情を聞いているらしい。こんな中途半端な状況で中に入っていくのも躊躇われて、は校長室の扉の前で二人が出てくるのを待つことにした。ここからでも”人”ではないには充分すぎるほど中の会話は聞こえてくる。
『わ・・・・・・わかんない・・・。僕、腰が抜けて、座り込んじゃって・・・。でも、顔はフードに隠れてよく見えなかった。・・・だけど。」
『だけど?』
『フードから、すっごく綺麗な金髪が見えました。先輩の髪の毛くらい綺麗で、とっても長くて。』
『ふうん。僕みたいな金髪ね。それはさぞ見事なことだろう。で、その女は君に何か言ったかい?』
ナルシスト・・・!
は一瞬顔を歪めたが、再び二人の会話に集中する。
『あの・・・僕、ホントに怖くて何が何だかわかんなくて、だからもしかしたら勘違いかもしれないんですけど。』
『いいよ。どんなささいなこな情報でもほしい。教えてくれ。』
『あの・・・・・・『あれはどこ』って言ってた気がするんです。』
『あれは・・・どこ?』
『はい。綺麗だけど、とっても悲しそうな声でした。そして怒ってました。・・・あれはどこ。あれを返して。そう言ってたような気がするんです。』
「探し物をする幽霊・・・か・・・。ふーん・・・なんて言うか、お決まりだなぁ・・・。」
はそう一人ごちる。
どうするかなーなどとつらつら考えていると校長室の扉が開き、襲われた生徒―ファーガス―が教師に連れられて出てきた。そして扉の隣に立つに一瞬驚いた顔をしたが、行儀欲礼をして去っていった。そして、
「。君も入っておいでよ。」
「話はもう言いのかい?途中で邪魔するのも悪いかと思ったんでね。」
扉が開いたときに姿が見えたのだろう。エドワードに促されても校長室の中に入る。
「ああ、もう一人、トーヤ・ボールドウィンと話をするよ。」
そう言ってはエドワードとシーヴァと共に、トーヤのいる部屋へと入っていった。