白銀の獣が紡ぐモノ 銀の瞳が映すもの編 act7
次の日、授業が始まるのを待ち、三人は中庭に出た。幽霊が出没しているという場所を見るためだ。
「本当に寒くありませんか?コートをお召しになったほうが・・・。」
ジャケットを着込み、何故かを抱き寄せながら歩くエドワードにシーヴァは声をかけるが、エドワードは軽い足取りで校舎への道を歩きながら言う。
「着ぶくれると、身のこなしが重くなる。捜査の邪魔だ。寮からずっと歩いてきたから、身体は温まってる。」
「・・・だったら離してくれないかな?エドワード君。」
「や・だv」
「ガキの駄々っ子かこのやろう。」
微笑ましいのか何なのかよく分からないやり取りをしながら、それを見つめるシーヴァも一つため息を吐く。
「やれやれ。寒くなったら遠慮せずに仰ってくださいよ。」
「それよりもエドを僕から引き離してくださいよ。」
「無理です。」
即答しちゃったよこの人。は諦めたように大きくため息を吐き、エドワードに引きずられるようにその場所に向かう。校舎に囲まれた四角い中庭。真ん中に噴水。
「エド、なんか落ちてる。」
エドワードに視線だけで促され、シーヴァは噴水に駆け寄った。それはびしょぬれになった小さな黒い手帳。
「これは・・・。」
「学生証だよ。見せてみろ。」
エドワードはシーヴァから手帳を受け取り慎重に開いてみる。最初のページに昨日幽霊に襲われた少年―マーク・ファーガス―の写真。
「ファーガスのものだ。律儀に学生証を指定された場所に置いたんだな。ということは・・・。」
ちょっと待っててくれと言ってから離れるとシーヴァと二人でファーガスが襲われたときのことを再現してみる。、
「ナイフがまともに刺さっていれば、肩か胸を傷つけられていただろうな。・・・それにしても、薄い刃だ。あまり実用的とは言い難・・・あ。」
「エドワード様?どうなさい・・・あ。」
「?どうしたの、二人とも。」
二人の再現を見ながら、噴水周辺に残る残滓を探っていたは二人が急に口を閉ざし、一点を見つめていることを不思議に思い、同じようにそちらに視線を向ける。
すると校舎のほうからくたびれたベージュのコートを着て擦り切れた靴を鳴らしながら、さながら雄牛のように爆走してくる男。
「てめえ、この野郎!」
物凄い勢いでこちらにやってくると肩で息をしながら怒鳴った。見たままなどすの利いた声だ。
「誰?」
「ちょ・・・。」
の呟きもシーヴァの制止も耳に入っていないようで、男はエドワードの襟首を掴んで締め上げた。
「てめえはこの学校を卒業して、田舎に帰ったんじゃなかったのか!何をまだこんなところをウロウロしてんだ!しかも、お付まで連れやがって!」
「僕は無視か。」
アウト・オブ・眼中。を無視したまま、二人の言い合い(男の一方的)はしばらく続いた。
ギャグなのかシリアスなのかわかんない・・・!
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