ようこそ異世界へ!〜act2〜

「ねぇ、原宿不利。」
「原宿不利言うな。」
「ここって、前にユーリが言ってた異世界?」
「無視かよ。って・・・まぁそうだな・・・。うん。」
「へぇ、そうなんだ。」
「って、何速攻で納得しちゃってんの?!」
「あら、あたしの順応能力舐めてもらっちゃ困るわね。」
・・・そうでした。こいつの順応能力は只者ではありませんでした。
そんなことを考えながら周りを見渡していると例のごとく、
「陛下ー!」
ギュンター登場。また本日も暑苦しい限りである。その後をいつもの爽やかノンフライ(笑)な笑顔でコンラッドがついてくる。もういつもの見慣れた光景だ。
「陛下!ご無事ですか!?ああ!何故こう毎回ちゃんとお呼びすることができないのだ!」
ぐぉぉぉぉー!と一人謎の雄たけびを挙げながら悶絶するギュンターを後目にコンラッドは相変わらずの笑顔。
「お久しぶりです。陛下。」
「だから陛下って言うなよ。名付け親。あんたに陛下って言われるとなんかむずがゆい。」
「すいません、善処します。」
「何?この人ユーリの名付け親なの?」
隣から聞こえた少女の声に、一同の視線がそちらに集中する。
「あー・・・忘れてた。」
「忘れてたじゃないわよ。」
「ぐは!」
アッパー。
「陛下!」
「ユーリ!?」
この少女のどこにそんな力があったんだと突っ込まれそうなほど見事なアッパーに吹っ飛ばされるユーリに一同びっくり。
「なななななななんてことをー!陛下!ご無事ですか!そこのもの!いくら女性であっても陛下にこのようの無礼は許されま・・・せん・・・」
なんだかいろいろと喚いているギュンターを真正面から見据える少女。その少女を直視したギュンターの声が尻つぼみになっていく。
「ギュンター?ギュンターさーん?」
目の前で手を振ってみる。すると
「黒!」
「そこかよ!」
復活したと思ったら開口一番それですかギュンターさん。
「まぁ、それがギュンターだから。」
コンラッドのフォローになっていないフォローが入る。
「ところでユーリ。この全身黒ずくめのギュンターがおかしくなった原因・・・まぁいつもおかしいんだけど。」
さらっとかなり酷い言い様。
「で、このこはどちら様?そして何気に言葉通じちゃってるんだけど?」
「あぁ、そういえば。・・・とりあえずえーと、こいつは・・・、」
「どうもー。初めまして。渋谷有利の双子の妹で渋谷っていいまーす。」
「ってこと。そーいやお前言葉分かるの?」
「ふふん。あたしを誰だと思ってんの?」
自己紹介をし、ぺこんとコンラッドに向かって頭を下げたと思ったら今度はユーリに向かってふふんとふんぞり返る。
「そーでした。・・・お前昔っからそうだったよな・・・。」
あははーと遠い目をしながら一人納得しているユーリにコンラッドは疑問を投げかける。
「どういうこと?」
「あー、うん。こいつなー・・・昔っから日本語でも英語でもないどこの言葉かわかんない言葉やたら喋ってたからさー・・・。そのころは頭おかしいんじゃねぇの?とかいろいろ言われてたんだけどな。・・・こっちの言葉だったんだな・・・。」
説明しながら一人で納得。
「なるほど。双子でしたらそういう事もありえるかもしれないですね。双子というのは魂を分けた、一心同体のようなものでしょうから。おそらく、妹君のほうが先にこちらの世界に順応し始めていたのでしょうね。」
なるほど納得な説明を返してくれるコンラッド。やっぱり一番まともなのはコンラッドだと再確認したユーリ。
「で、これからどうすんの?」
ギュンターはあれだし。と未だになんだか悶絶しているギュンターを横目にユーリがぼそりとつぶやく。
「そうですね。とりあえずこんなところではなんですから、城の中へ。・・・今日はいろんな人が集まっていますが。」
最後の一文にちょっと反応するユーリ。
「・・・いろんな人って・・・?」
なんとなく想像がつきつつも一応訊いてみる。
「グウェンダル、ヴォルフラム、ツェリ様、・・・そしてなぜかアニシナも・・・。」
・・・大集合。ユーリは頭を抱えてちょっと蹲る。
「・・・今日厄日かなんかなのか・・・俺・・・。」
「あらー、あたしはラッキーね。なんか訊いてると全員重要人物っぽいじゃない。いっぺんに会えるなんて好都合だわvv」
はもう、嬉々として全員に会う気満々だ。
「え゛、お前会う気なのか?!」
「当然よー。うちのおばかな兄がいつもお世話になってますーってご挨拶しなくちゃーvv」
当たり前よーvvと本当に楽しそうに言うにユーリはさらに頭を抱える。
「ユーリ、とりあえず城の中に入りましょう。ギュンターは・・・ほっといてもいいですね。」
「・・・あ、うん・・・。」
コンラッドに促されて城の中へと入る三人。

ようやく置いていかれたことに気が付いたギュンターが奇声を発しながら城の中へ駆け込んできたのはその三時間後だった。
うちの女子はみんないろいろと強いです(笑)。
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