創られし騎士<ナイト>
チュンチュン
「ん・・・。」
窓からカーテンごしに朝日が差し込んでくる。この部屋の主である九条院アリスはベッドから上半身を起こし、大きく伸びをした。
コンコン
アリスがおきるのを見計らったように部屋の扉を控えめにノックする音がする。
「どうぞ。」
「失礼いたします。おはようございます。お嬢様。」
扉を開けて入って来たのは皇城学園の制服を着た亜麻色の長い髪を黒いリボンでポニーテールにまとめた紫の瞳の少女。
「おはようございます。さん。」
アリスもニッコリと九条院家令嬢にふさわしい笑顔でと呼んだ少女に応えた。
がアリスのもとにやってきたのはあの事件、『三番目<サード>』に襲われた、あの誕生日のすぐ後だった。アリスは母・ラミアに呼ばれ、ラミアの研究室にいた。そこでと対面した。
「お母さん・・・?この子は一体誰ですか?」
まさか隠し子・・・?とか嫌な想像をしてしまった自分をいさめ、ラミアに訊ねる。
「はじめまして、お嬢様。と申します。お嬢様をお護りするためにラミア様にお創りいただいた、人造人間<アンドロイド>でございます。」
「人造人間<アンドロイド>・・・?」
アリスは信じられないといった顔での顔を凝視する。少なくとも、目の前の少女は『創られたモノ』には見えない。見た目は普通の『人間』だ。
「うふふ〜vvどお?どお?ママすごいでしょ〜vv」
相変わらず少女のようなテンションでバックに「褒めてvv褒めてvv」というオーラを出して目をきらきらさせているラミア。
「・・・はい、すごいですね。・・・で、この・・・さんでしたっけ?を私にどうしろと。」
「だから、あなたを『護る』ために創ったって言ったでしょ。このこは『出来損ないの人形<ディフェクティヴィヴ・ドール>』を応用した子だからLTスフィアを持つ『殺戮人形<キリング・ドール>』ほどではないけど、戦闘能力も一応備わってるわ。本気で戦闘になったらやばいかもしれないけど、時間稼ぎ程度のことはできるはずよ。それに、このこの体内には『共鳴<エコー>』を抑える制御装置も内蔵されてるから、もしもアリスの制御装置がアクシデントで壊れても、このこがそばにいれば、ある程度抑えられるはずよ。」
一変、真面目な顔で応えるラミア。その応えにアリスも真剣な顔になる。
「ま、そんなに硬くならなくてもいいわ。そんなしょっちゅう襲われちゃ、こっちもたまんないもの。とりあえずちゃんにはウチの住み込みメイドっていうか、・・・うーん・・・アリス専属メイド兼ボディーガードってことで。明日から学校にも一緒に行けるように手続きもしてあるからvv」
やることが早い。
そんなこんなでアリスはと対面し、次の日から共に行動することとなった。
最初はアリスもうっとおしく思っていたが、の適度に距離を保った干渉し過ぎない態度にだんだん心を許していった。いつもつるむ三月や誠、怜奈たちにも溶け込み、アリスLOVEな瞑をはじめとする後輩たちにも認められ、そこそこ穏やかな学校生活を送って、今に至る。
そして今日も日課のようにはアリスよりも先に身支度を整え、アリスの部屋へとやってきた。
アリスの身支度を手伝い、朝食を摂り、学校へ向かう。
「さぁ、さん、行きましょうか。」
「はい。お嬢様。」
「お嬢様ではなく、アリスでいいと言っているでしょう。」
「あ、申し訳ありません、お嬢様。」
「・・・さん・・・。まぁいいです。少しずつでいいですから、直してくださいね。」
「はい。」
そんないつもの会話をしながらいつもの集合場所へと向かう。今日もアリスの毒舌飛び交う(笑)爽やかな一日が始まる。