天使の子守唄 禍つ鎖を解き放てact1

俺は目の前で雑鬼に潰されている昌浩を苦笑しながら眺めるしかなかった。
「そりゃあね、俺はほぼ毎晩都の安寧のために、夜もとっぷりと更けた丑の刻に邸を出て歩き回ってるさ。はたから見たら、もしかしなくても自由気ままな真夜中の散歩だろうよ。」
潰されたままぶつぶつと呟く昌浩。俺の腕の中のすーちゃんは「大丈夫かあれ。」という表情でその様子を眺めている。
「いやいや、ここにいる奴らはみーんな、お前が一生懸命やっているってことを知ってるぞ。」
「そーだよねー?昌浩頑張ってるよねー?」
昌浩の頭の上で雑鬼がわいわいがやがや。因みに俺の頭の上にも一匹。その声に俺も賛同する。
「・・・そうか、知ってるわけだ。」
「知ってるだろうさ。とーぜん。なんたってお前は、半人前でいまいち頼りなくてまだ修行中だけど、一応多分きっと立派になるであろう、端くれだけど陰陽師。」
「・・・アレって認めてるんだよね?」
「・・・多分な。」
もっくんの言いように苦笑すると腕の中ですーちゃんが唸る。・・・あ、青筋。
「そうそう、俺たちみんな、お前に期待してるんだぜ。」
「そうそう。」
一匹の雑鬼が言葉を発すれば、昌浩の頭の上でそうだそうだと賛同する声。
雑鬼の大合唱・・・。面白い光景だ(笑)。
「・・・・・・・・・だったらとっととどきやがれ―――――っ!!
「・・・昌浩ー・・・近所迷惑ー。」
昌浩の叫びについ突っ込みを入れてしまった。いや、だってねぇ。もう夜中だよ?そんな大声出したら近所迷惑だよねー?とすーちゃんに降ってみれば「・・・知るか。」と返されてしまった。
そのとき、ふと、背後から視線を感じてそちらを振り向く。昌浩も同じく視線を感じたらしく、そちらを振り向けば、
「・・・げ。」
「ん?」
昌浩が蛙が潰れたような声を上げた。もっくんもそちらを振り向く。その姿に気が付いた雑鬼たちの表情が明るくなる。そこにいたのは・・・塀の上に座る狩衣を着た男の人。・・・あの気配は・・・清明様?
「ひっさしぶりだなぁ!」
昌浩の頭の上に乗っていた雑鬼がぴょこんと飛び跳ねる。あ・・・昌浩、頭痛そう(苦笑)。
「仕方がないから、掘り出してやれ。」
男の人が言えば、十二神将が一人、六合が顕現して、昌浩の襟首を引っつかんで雑鬼の山の中から昌浩を引きずり出す。いつも昌浩にぶら下げられてるもっくんみたいだなー(笑)。
「どうも。清明様?どうなさったんですか?」
頭の上の雑鬼はそのまま、腕にすーちゃんを抱えて俺は塀の下へ移動する。
「これはこれは、殿。いやな、たまには昌浩と夜警も悪くないと思ったのさ。評判の潰れも見てみたかったし。」
「だから、評判ていうのやめてくださいよ、俺迷惑してるんですから。」
塀の上から降りてそう言う清明様はぶすくれる昌浩のおでこにでこぴん一発。
昌浩は清明様にいろいろ反撃しているが、ことごとく撃沈。
そんな様子をなんか微笑ましいなぁ・・・と思いながら眺めていた。
向こうから、なにか絵外の知れない妖気が近づいてきていることに、気が付かないふりをしながら。
いろいろとカオス設定です・・・!
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