天使の子守唄 禍つ鎖を解き放てact2
しばらく清明様と昌浩の漫才(笑)をほのぼのと眺めていたが、いい加減、嫌な気配がだいぶ近づいてきていることに気付いて俺は顔をしかめた。
「・・・ねぇ・・・。」
「・・・うむ・・・。」
俺の呟きに応えたのは清明様。それに続いてもっくんや六合、一緒にいた天一、玄武も気付いたらしく表情を固くする。さらに一呼吸おいて昌浩もようやく気付いたように顔を上げる。
「・・・遅いぞ。」
「もうちょっと早く気づけるようにならないとねーv」
清明様と俺に指摘されてまたむっとした表情になる。
「そんな顔してる場合じゃないよー?」
気付けば雑鬼たちは俺や昌浩、神将たちの後に移動している。
「要領のいい奴らだなぁ。」
「いいんじゃない?この子達は『友達』だし?」
昌浩が苦笑する隣で、俺はくすくすとおかしそうに笑う。
そのときふと風向きが変った。妖気。
「・・・きーもーちーわーるーいー・・・。」
「黙れよ。」
俺はすーちゃんを地面に降ろし、頭の上に乗っていた雑鬼も下ろして後に下がらせる。何が来てもすぐに攻撃できるように武器を顕現させる。
「manifestation<顕現>『昇霊銃』。」
両手に一丁ずつの拳銃。本当なら昇霊銃は一丁なんだけどね。天照様と月読様に力を与えられたこの身体なら、二丁の拳銃も扱うことが出来る。俺はそう確信している。
ざりざりざり
何かが這うような音がする。
「・・・・・・・・・蛇だ。」
「蛇?」
俺と昌浩が呟くと同時にすーちゃんともっくんは本性をさらす。
二人の神気は強い。その神気に当てられないように後ろに下がっていた雑鬼たちはさらに後ろに下がる。
「お前等ー、消されないように離れてろよー?」
『おー!』
「うん。いい返事。」
そう言ってるうちに闇に隠れていた異形の姿が顕になる。そこにいたのは大蛇。大蛇は俺たちの目の前まで来るとこちらを威嚇するように見詰めている。
「・・・なんか弱そー・・・。」
「見てくれはそれなりだがな。」
「確かに。だがそれなりでしかなさそうだ。」
上から俺、六合、騰蛇の順に大蛇に対する感想を述べてみる。だってさー・・・最初感じたもっそい妖気が全然無いんだもん。なんか拍子抜け・・・。
「少し黙っててくれ!」
「あ、ごめん。」
そんな緊張感皆無な会話をしていたら昌浩に怒られてしまった(苦笑)。
改めて真面目に大蛇と対峙すると大きく伸び上がり、大きな口を開けて牙をむく。
その大きな口めがけて、騰蛇が炎の蛇を打ち込む。同時に俺も両の手に持った銃から銃弾を吐き出す。炎の蛇は銃弾を巻き込み、騰蛇の炎と俺の銃弾が大蛇の中で暴れ狂う。
「ナウマクサンマンダボダナン、ギャランケイシンバリヤハラハタジュチマラヤソワカ!」
昌浩の声が響く。
「望める兵闘う者、皆陣列れて前に在り!」
詠唱と共に振り下ろされた検印から発せられた不可視の刃に貫かれ、大蛇は弾けとんだ。