天使の子守唄 禍つ鎖を解き放てact5
昌浩が帰ってきて、しばらく。夜も更けて妖たちが動き出す頃。俺は昌浩について夜警へと出かけた。因みに今日のメンバーは昌浩と毎度おなじみもっくんと俺、そしてすーちゃんのみ。たまに付いてきている六合は今日は清明様のところに残っているみたい。
そんな事を考えながら歩いていると、
「お、いたいた。姫ー!ついでに孫!」
「孫言うな!」
今日も登場雑鬼たち。っていうか昌浩の声を合図にして落ちてくる感じだから、反応しなけりゃ潰されないんじゃ・・・なんてことを考えてると雑鬼たちの会話が耳に入る。
「なんか、妙なのが出たらしいぞ。」
「妙なの?・・・まさか、大百足か?」
「百足?ナニソレ?」
「あぁ、前になんか予言みたいな言葉だけ残していきやがったんだ。意味わからん。」
もっくんに視線を向ければ、説明を入れてくれる。・・・やだな・・・大百足・・・。逢いたくない・・・。しかもなんか大蜘蛛まで出たというではないですかー・・・。・・・俺・・・虫は苦手なんだよねー・・・。
「いーや、そんなおっかないのが出たら、都にいる仲間たち全員、姫とお前のところに押しかけてるって。」
「・・・押しかけてどうするの?」
「そりゃあもちろん、やっつけてもらうのさ。」
やぁな予感がして訊ねてみれば、案の定。っていうか妖に頼られるってどうよ。
「で、何が出たの?」
「すげぇ怨霊。」
「怨霊?」
俺が首をかしげると「怨霊っていうのは〜」と雑鬼による怨霊講座が始まる。
俺としてはなるほどな内容だが、昌浩は「それくらい知ってる!」と言いたげな表情だ。
ま、そりゃそうだ。怨霊の定義くらいしっかり頭に入ってないとあの清明様のことだから「こんなこともわからんのか〜」うんぬんでからかい始めそうだ。
「あっちのほうで、ふたりと一匹が死んで、ひとり気絶して吹きっさらしの中で倒れてる。いやはや、あとどれくらいで凍え死ぬかと賭けてたら、通りすがりの検非違使に見つけられて助かった、という。」
「・・・いや、そこは賭けるなよ。助けようよ・・・。」
思わず突っ込みを入れたくなる。そんなこと知ったこっちゃないという雑鬼たち。
「―――で、その怨霊とやらはどうなったんだ。」
「検非違使が来る前に、よろよろしながらどこかに消えたそうな。俺も直接見たわけじゃないからな。」
との雑鬼からの情報。
「・・・何が目的だったんだろう?」
「さぁ。」
俺が首を傾げれば、一緒になって昌浩も首をかしげる。・・・可愛いぞ、昌浩。
「それにしても、あれだなぁ。」
「ん?」
「なに?」
「夏でもないのに幽霊かよ、季節はずれもいいとこだな。」
「や、幽霊に季節なんて関係ないと思うけどなぁ・・・(苦笑)。」
その日の夜警はそんなほのぼのした会話と情報で終了した。