天使の子守唄 禍つ鎖を解き放てact7
「強がっちゃってまぁ」
「別に強がってなんかないよ?」
「え?強がってんの?」
「だから強がってないって。」
「あ、そ。」
いつも通りの夜警。だけど、今日は先日雑鬼たちが言っていた怨霊を探すのが目的。
「・・・それにしても、彰子様パワーは偉大だわねぇ・・・。」
「確かに。」
「?なんか言ったー?」
「別にー?」
帰ってきてから凹みに凹んでいた昌浩は、俺が部屋に戻った時には彰子様と一緒に俺に歌をせがむくらいに復活していた。完全に悩みの種がなくなったわけじゃないだろうけど、少なくとも、こうやってケロリとしていられるくらいには復活した。やっぱ愛の力は偉大だね☆
「百足とか蜘蛛とか、出てきてくれると手っ取り早くていいんだけどなぁ。」
「え、俺は嫌だなぁ・・・。虫は苦手だ・・・。」
いろいろと考えてると昌浩がなんか不吉なこと呟くからとっさに突っ込みを入れてしまう。
虫は嫌だ・・・。
「あ。にも苦手なもんがあるんだー。」
「そりゃ俺だって苦手なもんくらいあるよー。人間だもん。」
「半分神だけどな。」
「元は人間だもーん。」
けらけらと、昌浩と話をしていると荒れ果てた邸の前に通りかかった。
ふと、中を覗いてみると妙な悪寒が全身を駆け抜けた。隣を見れば昌浩ともっくん、足元のすーちゃんも表情が固い。俺と、同じものを感じたらしい。自然と肩に力が入る。
すーちゃんともっくんが垣根を飛び越えて邸の中へと姿を消す。俺と昌浩もお互いに頷きあい、その後を追う。
中は手入れがされていないため、草が伸び放題。むき出しの腕や足、首筋にぴりっとした痛みが走る。
「あてて・・・。」
「あとで薬塗らないと・・・。」
俺と同じように草で切ってしまった昌浩も、呟く。
「ここ、誰の邸?」
「確か・・・ずっと前に、当時の帝の不興を買って左遷された貴族だ。なんていったかな。えーと。」
「左遷?左遷って飛ばされちゃったの?」
「そのはずだ。その地で憤死したとかなんとか、争いに負けた者の末路は切ないねぇ。」
昌浩の問にもっくんが答え、俺がさらに質問をすれば、もっくんが微妙にいい加減な答を返してくれる。
その瞬間、痛いくらいに禍々しい気配が充満する。次の瞬間、
『・・・・・・・・・あの・・・・・・男・・・』
低い、恨みを孕んだ声が響いた。