天使の子守唄 禍つ鎖を解き放てact10
「れ。」
彰子を見つけ、声をかけようと思ったが、なにやら六合と話をしている。
やっぱり彰子気付いたんだ。さすが。昌浩をもしのぐ見鬼の持ち主(清明様に教えてもらった)。
「あ、。お買い物は終ったの?」
「うん。彰子は?」
「まだ・・・ねぇ。昌浩はどんな食べ物が好きだと思う?」
「昌浩の好きな食べ物?」
なにやら真剣な顔をしているから声をかけようか迷っていると彰子のほうが俺に気付いて手招きしてくれた。
昌浩の好きな食べ物・・・彰子は昌浩にお土産を買って行くつもりなのか。可愛いなぁvv
「六合にも言ったけど、私、昌浩に何もして上げられないから・・・。」
「そんなこと無いと思うけどなぁ・・・(苦笑)。」
「?」
気付いてない。昌浩にとって彰子の存在がどれだけ大きなものか。『彰子』という存在がどれだけ昌浩の力になっているか。お互い、鈍いっていうかなんていうか・・・。そんな姿が微笑ましくて。
いろいろと物色しながら市を歩く。
そのとき、唐突に、何か得体の知れない物が身体を駆け抜けた。
「・・・彰子・・・。」
「・・・も?」
「うん。」
《どうした。》
彰子も何かを何かを感じたらしく足を止める。と同時に彰子は通行人にぶつかられ、よろめいた。
「彰子!」
「ああ、ごめんなさい。怪我ははい?」
「余所見をしていて・・・、ごめんなさい。」
ぶつかった女に助け起され、彰子と俺はそのまま市の奥へと向う。そのときふと、女から不吉な気配を感じたのは気のせいだと思う事にした。
そうして彰子と手を繋ぎながらまたぶつかったりしないように注意しながら進んでいくとふと何かに気付いたように彰子は空を見上げる。俺もつられて空を見上げると、
「・・・何・・・?」
「・・・なにかしら。」
空が・・・。彰子も俺も、何か変だと感じた。これ以上、進んではいけない。俺が踵を返す前に彰子に手を引かれ、逆方向に歩きだしていた。やっぱり彰子の感覚は凄い。昌浩や俺、清明様の比じゃない。
「六合は、昌浩に好き嫌いとか、あると思う?どんなものなら喜ぶかしら。おいしいものよりも、使えるもののほうがいかしら。すぐになくなるものよりは・・・ねぇ六合、聞いてる?」
《―――》
「無視かい。」
並べらたものを一生懸命吟味しながら、彰子は後に控えている六合に声をかけているが、六合は無言を貫く。
俺はその様子を苦笑しながら、一歩後から眺める。結構面白い光景だ(笑)。
「は、何がいいと思う?」
「ん?そうだなー。甘いものとかどうだろう。疲れてるときは甘いものが一番だからねー。」
「甘いもの?」
「そ。甘いもの。疲れてると頭の働きも鈍くなるでしょ?そういう時は甘いもの!甘いものは脳みその栄養になるんだよ。」
「じゃぁ、何か甘いもの・・・。」
そんな会話をしながら進んでいると、ふといいことを思いついたというように超がつくいい笑顔で爆弾を投下した。
「そうだ。物の怪のもっくんがもっくんなんだから、六合もりっくんのほうが可愛いかも。そのほうが親しみやすいと思わない?」
「ぶは!」
瞬間、俺は思いっきり噴出した。
六合は彰子の正面に顕現して仁王立ち。そして目が訴えている。「やめろ」と。
「・・・ダメ?」
返事はなくても六合の目は肯定だと応えている。俺は笑いが止まらないまま不服そうに歩き出す彰子を追いかける。ふと、彰子の足が止まった。彰子の見詰める先を見ると、そこには干し果物が詰まれている。
「どうだね?安くしておくよ。」
物売りのおっちゃんが声をかけてきた。彰子は少し考えて、干し杏と干し桃を買って俺に笑いかける。
帰り道、彰子と手を繋ぎながらふと空を見上げる。なんだか不自然に白っぽい、膜がかかったような空。
それがどんどん広がってるような気がして、不安に思えた。