天使の子守唄 禍つ鎖を解き放てact12
足元に・・・式盤落ちている。・・・あれ・・・落としたのかな・・・よかったね・・・足に落さなくて。音からして物凄く重そうだぞ?
「・・・いち?」
「そう。あ、でもね、も一緒だったし。清明様に命じられて十二神将の六合がついてきてくれたから、心配しなくても大丈夫。」
にこにこにこ。
もうこの笑顔には誰も敵わない。昌浩は渇いたような笑いで応え、膝の上のすーちゃんも苦笑してる。
「あ、そう。と六合か。それは、良かった。」
よっこらしょという掛け声と共に式盤を持ち上げる昌浩。・・・親父臭いぞー。
「それで、市で見つけて買って来たものがあるんだけど・・・。」
「なんだ?」
「これ、なに?」
彰子が袂から出した紙包みを受け取り、もっくんと一緒に首をかしげる。
「干し杏よ。昌浩、食べたことない?」
「杏は何度か・・・。でも、干し杏はないなぁ。・・・おいしいなぁ。こんなのあるんだ、知らなかった。」
一気に五つ、ぱくぱくと笑顔で頬張り、嬉しそうに言う。その姿を見て、彰子も嬉しそうだ。
「露樹様が、好きなものを買っていいって言ってくださったの。何がいいかなって思ったら、が疲れてるときには甘いものがいいって。昌浩、最近忙しそうだから。」
「そっか。ありがとう。彰子。。」
「いえいえー。」
「それでね。」
二度目の爆弾投下。
「物の怪のもっくんがもっくんだから、六合もりっくんて呼んだら親しみやすくていいと思ったんだけど、どうかしら?」
「ぶは!」
「・・・・・・はい?」
俺は噴出し、昌浩はフリーズ。まだ言うか彰子!(爆笑)。
「「・・・りっくん?」」
もっくんとすーちゃんが同時に隠形している六合のほうに視線を移す。俺もそれにつられて笑いをこらえながらそちらを見ると、いつもの無表情が少々引きつっている。・・・そんなに嫌かりっくん!(大爆笑)。
それから『もっくん』『りっくん』呼びについての討論が昌浩と彰子で繰り広げられる。
俺は未だに硬直している六合(隠形中)の隣まで座ったまま移動し、隣に座ると呟くように声をかけた。
「・・・がんばれ。」
それから結局もっくんは『もっくん』のままで落ち着き、六合は『りっくん』とは呼ばないことで合意した(もっくんは不満そうだったが)。
「・・・なぁ、昌浩。」
「ん?何?。」
「空が変。」
「空?」
「あ、そう。私もそれを言おうと思ってたの。なんだか白い霞がかかっているみたいに、・・・薄氷をとおしたような、そんな感じに見えたの。」
俺と彰子の真剣な訴えに、昌浩も、もっくんも、すーちゃんも表情を険しくした。