天使の子守唄 禍つ鎖を解き放てact13

『藤原行成様が倒られた』

行成様の邸から使いが来て、清明様にそう告げた。このままでは命が危ないと。
その場に居合わせた俺と昌浩は、清明様の命で行成様の邸へと向った。
俺はさすがに中に入るわけには行かないから、邸の外で待機。昌浩は、使いできていた人と一緒に、邸の中に入って行った。

「ねぇすーちゃん。」
「なんだ。」
手持ち無沙汰に、邸の塀に寄りかかって足元で毛繕いをしているすーちゃんに声をかける。
「・・・俺・・・本当に昌浩のやくに立ってるのかな。」
すーちゃんと目を合わせずに、遠くを眺めながらポツリと呟く。
―昌浩の助力となれ―
天照大御神様に命ぜられた、俺の、役目。
でも、俺はただ、昌浩と共にいるだけで、何もしていない。
今も昌浩は行成様をお助けするために、頑張っているのに、俺は何も出来ない。このままで、いいのだろうか。
「大丈夫だろう。」
「ふぇ!?」
いきなりすーちゃんが肩の上に乗ってくるから驚いてよろけてしまった。顔の横から、すーちゃんの闇色の瞳が覗き込んでくる。
「大丈夫だ。ちゃんとやくにたってる。『仲間』がいるだけで、あいつは強くなれるんだ。」
そう言って、本物の猫のように頬ずりしてくれる。
それが何だか暖かくて。嬉しくて。自然と笑みがこぼれた。

これから昌浩に大きな試練が降りかかる。俺は、昌浩を、守る。
短!
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