天使の子守唄 禍つ鎖を解き放てact15
邸に戻り、昌浩は急いで着替えを済ませる。俺は部屋の前でそれを待つ。
すると心配したような顔の彰子が顔を出す。
「りゃ。彰子。」
「・・・昌浩、・・・出かけるの?夕餉は?」
「あー、急いでるから、いい。食べてる時間が惜しい。」
あー、彰子寂しそうだぞー。・・・って昌浩気付かないしー。
「せっかく待ってたのに・・・。」
「・・・ごめんね?ちょっとばたばたしてるからさ(苦笑)。」
隣で俯いてしまった彰子の頭を撫でてやると、驚いたようにこちらを見上げてくる。
「終ったら、みんなで一緒におしゃべりしよう?だから、待っててあげて。昌浩が帰ってくる場所に、なってあげてね。」
「・・・うん。」
よしよし、とまた頭を撫でてあげれば嬉しそうに少し微笑んでくれる。それを彰子の足元でもっくんが何かいいたそうに見上げてくる。
「・・・何さ。もっくん。」
「いやぁ・・・なんでもないさー。」
「よし、準備できた。行くぞもっくん。。」
何だか大きな荷物を持って庭に降りようした昌浩に彰子が声をかける。
「昌浩。」
「え?むぐ。」
何かを口に突っ込んだ。・・・やるな、彰子。
「・・・桃?」
「そう。干し桃。はい、これ持っていって。夕餉を食べないなんて、身体に悪いもの。これだったら歩きながらでもつまめるでしょう?」
にこにこにこ
この微笑に勝てる人間はいないだろう。ぽかんと呆けた顔をする昌浩に苦笑する。
「それはいいな。持っていけ、昌浩や。」
「確かに。貰っとけ貰っとけ。甘いものはすぐに力になるからなー。」
昌浩はむーっと少し考えるが、諦めて包みを受け取った。
「じゃぁ、行ってくる。」
「気をつけて。」
「うん。」
「遅くなっちゃうと思うから、待ってないで先に寝ちゃってね。寝不足は美容の大敵だぞv昌浩なら俺達がしっかり守るから、心配ないよ。」
俺が庭に降り、振り向きざまにそう言えば、彰子は笑顔で頷いた。それを確認すると、俺は昌浩と共に、夜の都へとくりだした。