天使の子守唄 禍つ鎖を解き放てact17
車之輔の話によると都の方は今物凄いことになっているらしい。どこから沸いてきたのかというような恨鬼の群れ。それが都中を徘徊しているとのこと。・・・それは恐ろしい・・・。
「嘘・・・全然気付かなかった・・・!」
昌浩が愕然とした様子で呟くのにあわせて、もっくんも慌てたように言う。
「待て、俺もまったく気付かなかったぞ。お前はどうだ。」
「俺もだ。」
「私もです。」
隠形していた六合が顕現し、答え、さらに知らせを怨霊の名を知らせに来た天一も不審げに応える。
「、お前はどうだ。」
「んー・・・なんか嫌な感じはしてたけど、そんなにうようよしてたらさすがに気付くと思うんだけど・・・。ねぇ、すーちゃん。」
「そうだな。俺もそこまで不信に思うほどの気配は感じなかった。」
全員が気付かなかった。と言うことは・・・都の中に閉じこめられている?
「我々も気付かなかったということは・・・その恨鬼たちの気配は、都の中のみ充満しているのではないでしょうか。何かに囲われているように、漂い出ることがない・・・」
天一も同じことを考えたらしい。その考えにもっくんと六合が目配せをする。瞬間、
「―――清明・・・?」
呟きと同時に六合は魔方陣から飛び出して行った。
「六合?!何が・・・?」
「清明様にもなんか合ったみたい。」
「六合は、それを察知して赴いたのです。ここには騰蛇と私がいますから。」
「あ、俺も忘れないでねー?」
「はい、様。」
心配そうに首をかしげる昌浩に俺と天一はにっこりと笑い返した。
「あちらのことは、清明様にお任せいたしましょう・・・。」
「そうそう。こっちも、そろそろ気を引き締めていかないといけないみたいだよ・・・。」
全員の視線が険しいものになる。魔方陣の壁が、歪む。冬の乾いた空気ではない風が押し寄せてくる。
「・・・・・・来た!」
昌浩が叫ぶ。そちらに目を凝らせば闇よりも瞑い塊がこちらへと向っている。
それを凝視したまま昌浩はもっくん基騰蛇に穂積諸尚講義を受けている(苦笑)。
そしてその講義が終り、諸尚についての疑問が氷解した瞬間、
『見えた―――!』
諸尚の怒号と共に、呪詛に引き寄せられた恨鬼たちが、魔方陣めがけて突進してきた。