天使の子守唄 禍つ鎖を解き放てact18

諸尚の怨霊が魔方陣の中に飛び込んできて、昌浩が用意した形代に食らいついた。そして、形代がずたずたに切り裂かれ、昌浩の怒号が響くと、怨霊はようやく気付いたというようにこちらを睨みつける。
昌浩は剣印を結び、その前には騰蛇が炎蛇を躍らせ、結界を張る天一。俺は昇霊銃を構える。
―――陰陽師!
諸尚と共に魔方陣の中へ飛び込んできた恨鬼たちは外に出ようとして結界にぶつかり、そのまま消滅する。
陰陽師、陰陽師!藤原行成をどこへやったぁぁぁぁぁ!
諸尚の叫びが木霊する中、昌浩の怒鳴りが負けじと響く。
「お前を陥れたのは行成様じゃなくて、さらにそいつはとっくに死んでる!人違いだ!」
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ―――!
「お前が黙れよ。」
結界の中で怨霊が呻く。
その間も回りには結界に入らなかった恨鬼たちが周りをうようよ。正直、うっざい。
昌浩も、騰蛇も、天一も、俺も、ひたすら恨鬼たちを調伏していく。
恨鬼たちは一番弱い存在が分かるのか、昌浩めがけて飛んでくる。
「―――退け!」
天一が昌浩の前に結界を張り、騰蛇が炎の蛇で消していく。俺は昇霊銃を構え、ひたすら一匹ずつ消す。
攻撃の方向が変った。少しずつだが、天一を狙っている。そして、一気に大群が天いつめがけて直下。
「「天一!」」
俺と昌浩が同時に叫ぶ。天一の衣が裂ける。いたるところに傷が出来ている。駆け寄る昌浩と俺に向って恨鬼が突進してくる。
そいつらが俺たちに襲い掛かる前に炎の蛇と黒い風が恨鬼たちを一掃する。
俺たちの前に、俺たちをかばうように立つ騰蛇とすーちゃん基黒曜の身体に恨鬼の爪が傷を作る。
「紅蓮!」
「黒耀!」
紅い血が、腕や肩、あらゆるところから流れる。
「ああ、気にするな。大したことはない、放っておけばすぐに治る。」
「でも、だって、痛いじゃないか!」
昌浩は、自分が痛そうな顔で、叫ぶ。あぁ、この子はいい子だ。
「痛いな。」
「・・・黒耀・・・。」
「大丈夫だ。」
いつの間にかすーちゃんは黒耀の姿に戻って、後から後から蛆虫のごとく涌いてくる恨鬼をなぎ払っている。払いきれなかった奴らが騰蛇と黒耀に傷を作っていく。
痛い・・・。天一と昌浩をかばいつつ、騰蛇と黒耀が払いきれなかった恨鬼たちを昇霊銃で消す。キリがない・・・!
「昌浩、お前は前だけ向いていろ。有象無象は俺たちに任せて、さっさと諸尚を仕留めろ。そのほうが、俺たちも傷が少なくてすむしな。」
恨鬼に向いながら騰蛇が不適に笑う。そして天一も立ち上がり、綺麗に微笑む。
「天一!」
「私も十二神将ですから。騰蛇や青龍のように、敵を攻撃する術は持っていませんけれど、あなたを守ることはできます。」
「天一・・・。」
その姿に、自然と眉間に皺がよった。
バトル苦手・・・!
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