天使の子守唄 六花に抱かれて眠れact1

諸尚の怨霊を調伏して数日。夜中に、妙な気配を感じて、目が覚めた。
「・・・すーちゃん。」
「・・・あぁ。なんか来たな。」
俺は袿を羽織って気配のする方向、昌浩の部屋へと向った。

部屋の前まで来ると、同じく気配を感じて心配になってやってきたのだろう。彰子が固まってる姿が見て取れた。
「どーした?彰子・・・?」
昌浩の部屋を覗くと明らかに何かに憑依された様子の昌浩の姿。でも、悪いものじゃない。
「ほう、これが噂の藤の姫と、天照に使わされた娘か。・・・その猫はスサノオか。なるほど、姫の周りにはうっすらまとわりついた影があるな、不憫なことだ。」
「本人を目の前にして、そういうことを言ってくれるな。」
もっくんは大きく溜息をつき、俺たちを部屋の中に招き入れる。
「心配ない。状況を説明してやるから二人とも、座れ。」
ぽんぽんと、隣に座るように促され、俺と彰子は昌浩の部屋の中へ入り、座る。すーちゃんは俺の膝の上。
「さて、どのように説明するつもりだ?天照の姫はともかく、藤の姫、見かけによらず中々度胸がすわっている。」
「あんたに言われなくても、それくらい百も承知だ。」
火花が見えそうな勢いでのやり取り。すーちゃんの表情もなんか固い。
「・・・すーちゃん、お知り合い?」
不信に思って聞いてみればさらに苦虫を十匹ぐらい潰したような顔になる。
「・・・こいつは、なりは昌浩だが・・・貴船の祭神、高龗神、通称高淤の神だ。」
「・・・神様降ろしちゃったの?昌浩すげー。」
突っ込むところはそこかとすーちゃんにいやみっぽく言われるがどこ吹く風。
「・・・以前、あぁ、はいなかったんだっけな。異邦の妖異を調伏したとき以来、こちらの神は物好きなことに昌浩をおきに目したらしくてな。はた迷惑極まりないことに突然やってきては与太話をして去っていくという・・・。」
「・・・神将、お前もなかなか度胸あるな。」
もっくんの説明に膝の上のすーちゃんが面白そうに笑う。
「・・・どーも。」
おもいっきり『気に食わない』オーラを隠そうともしないもっくんに苦笑する。
「ってことは、すーちゃんのお仲間さんですか。そーいや、ご挨拶行ってなかったですね。また改めてご挨拶に伺いますが、とりあえず始めまして、高龗神。と申します。天照大御神様の命により、この地へ参りました。以後、お見知りおきを。」
姿勢を正してペコリとお辞儀をすれば、昌浩(中味は高淤の神)は満足そうに笑う。
「ふふ。面白いな。お前もこの私を高淤と呼ぶことを許そう。」
「アリガトウゴザイマス。」
・・・なんかもっそい違和かーん。昌浩がお色気キャラになってる・・・。すーちゃんはひらりと俺の膝から降りると、本性に戻り、昌浩(中味は高淤の神)を見下ろす。
「ほう。スサノオ自ら姫の式神か。天照も面白いこと考える。」
「姉上は昔から『自分が楽しければ全てよし』というのがモットーだからな。」
「それでお前に御鉢が回ってきたということか。」
「まぁな。それでも俺はも、その昌浩というやつも結構気に入っている。あまりちょっかいは出すなよ。」
「そうか。お前がな。いいだろう。」
神様同士の会話はなんつーかもう、横槍入れたら殺されるようなオーラが漂ってて迂闊に口が挟めません・・・!ちょっと怖いです・・・!なんていうの?腹の探りあい?(爆)。
不意に昌浩(中味は高淤のk)はびくびくとその状況を見ていた彰子の顎を掴み、自分の方を向けさせる。
「・・・っ!」
「・・・ほう、なるほど。人にしてはそこそこの美貌だな。将来が楽しみだ。」
不意打ち・・・!彰子はびくびくしてたのもどっかに吹っ飛んだ感じで。いろんな意味でフリーズしてしまった。
「あのー、高淤の神様ー。あとで清明様のお小言が飛んできそうなのでそれくらいにして頂けますかー?」
おずおずと声をかけてみれば昌浩(中味は高淤のk←しつこい)はこちらを振り返り、にやりと笑った。
「ふ、まぁいい。それに、『これ』もそろそろ限界のようだ。」
「おい。」
「騒ぐなよ、ほかにより良い形代があるならともかく、選択肢がないのだからしょうがない。それに、いくら力があるとはいえ、清明の身体を借りるのは癪だ。」
あー確かに。絶対なんか見返りを要求してきそうだ。
「近々また、何か起きそうだしな。退屈する暇もない。・・・、近いうちに挨拶に来い。楽しみにしているよ。」
「え!はい!!」
その言葉を最後に、高淤の神は昌浩の体から帰っていった。

高淤の神とご対面(仮)させてみた。
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