天使の子守唄 六花に抱かれて眠れact6
その日の夜。昌浩はいきなり夜警に出ると言い出した。物忌みの日は外に出てはいけないのでは?と聞けば、俺が部屋から去ったあと、雑鬼たちが都の異常を知らせて行ったとか。うーん、真面目だなぁ。とか思って前を歩く昌浩を見れば、もっくんを襟巻きにしている。はぁと息を吐けば、真っ白。
「そーいやぁ・・・貴船はもう真っ白って言ってたねぇ・・・。」
俺がそう呟くと、昌浩はぴたりと足を止め、ぎぎぎと音がしそうない勢いでこちらを振り向く。
「・・・、言ってたって、誰が?・・・まさか、まさか・・・」
「うん。そのまさか。高淤の神様よん。・・・あんまり深く考えないほうがいいよ?っていうか、考えたらおしまいだと思う。」
俺の答えに昌浩の首で襟巻きにされているもっくんと、俺の腕の中で丸くなっているすーちゃんもうんうんと納得したように頷く。・・・や、そこは頷くところなのか・・・?
そんなことを考えていると、ふと変な気配を感じて足が止まった。昌浩も同様に足を止める。だんだん近づいてくるその気配に、神経を尖らせる。
ふと、昌浩が何かに気付いたように振り向く。
「・・・どうしたの?昌浩。」
「や、なんか呼ばれたような気がして・・・。」
「・・・・・・げっ」
昌浩が答えるのとほぼ同時にもっくんがものすんごく嫌そうな(実際嫌なのだろう)声を出した。
「もっくん、どうした?」
「あまりあいたくない奴がいる。隠れろ。」
何だろうと首を傾げつつ、物陰に隠れる。
「え、何?」
何がいるのだろうと、昌浩と一緒に首だけ後ろを振り向けば
「げっ。」
「わぉ。」
そこに居たのは藤原敏次こととっしー。陰陽寮の帰りなのだろうか。松明を手に、暗闇の中を歩いている。
「あっちゃー。ばっとたいみんぐ。」
「ば・・・?とにかく、見つかると、まずい。」
「まずい、絶対まずい。そういえばまだ恋人疑惑晴れてないよ、俺。」
「あら、そんな疑惑合ったの。」
もっくんを抱えて物陰に頭を引っ込めた昌浩に笑いかければ、「笑い事じゃない。」と膨れた顔で答が返ってくる。しかし、とっしーの歩いている方向には、あの、嫌な気配。しかもどんどんこちらに近づいてきている。
「・・・大丈夫かよ。」
「うーん。敏次殿は陰陽生の中でも選り抜きだし・・・、相手がとんでもないのじゃなければ退治して終れるんじゃないかと思うけど。」
いやぁ・・・昌浩ほどじゃないと思うけどなぁ・・・というのは心の中だけにしまっておく。
「・・・一応、付いていったほうがよくない?」
「うん。」
俺たちは見つからないように細心の注意を払いながらとっしーの後を追った。