天使の子守唄 六花に抱かれて眠れact8
次の日、帰宅された吉昌様によると、陰陽生から調伏の請願書が出されたとのこと。ほっとけばあれらも消えるだろうと考えていた俺たちは、今日も今日とて夜警へ出発。
歩きながら毎晩恒例の大口論大会を繰り広げるもっくんと昌浩を平和だなーとか思いながら眺めていると今日は一緒に来ている六合が呆れたように溜息をついたのがわかった。
「(苦笑)六合、溜息つくと幸せ逃げてくよ?」
「・・・。」
無言で返された。
すると、いきなり昌浩ともっくんが駆け出す。驚いたが、何かを感じたのだろう。すーちゃんを地面に降ろし、俺も後を追う。六合が何かに気付いたように視線を向けていたのが気になったが、俺の役目は『昌浩の助力』。昌浩優先。全力で昌浩の後を追った。
全力疾走し、昨日巨大ナメクジが現われた辺りまで来ると、昌浩ともっくんは急停止。それに気付いた俺も急ブレーキをかけ、すんでのところで昌浩に激突せずに止まることができた。
いきなりの急停止に何事かと思って視線を移せば、松明を手にした一団。おそらく調伏申請が出されたために派遣された一団であろう。・・・厄介だ。
「ん?考えてみたら、俺の姿は大抵の奴には見えないんだから、別に隠れる必要ないぞ?」
「あー、俺もそう思う。・・・だったらもっくん、ちょうどいいから、あの一団が何話してるのか、ちょっと聞いてきてよ。」
「おー、昌浩ないすあいでぃあー。れっつごー、もっくん。」
「ない・・・?れ?」
聞いた事もない横文字に首をかしげるもっくんが可愛いです。はい。
「『ないすあいでぃあ』は『いい考え』って意味でー『れっつごー』は『さぁ行こう』と言う意味です!はい!行ってこーい!」
「えー、めんどくせぇなぁ。いっそ昌浩、お前も昨夜の敏次のように、隠形の術を駆使して自ら情報を獲得せいや。」
「やめたほうがいいよ。あれ、陰陽寮から派遣されたのも混ざってる。気付かれたらおしまいだよ。」
「そうそう。隠密行動してるんだし、見つかったら父上に迷惑がかかる。できるだけ証拠を残さず、闇に潜んで極秘行動が鉄則。」
「うーむ、まるで悪者のような会話だなぁ。」
俺と昌浩の言い分に納得したというかなんというか眉間に皺を寄せて感想を述べれば俺と昌浩は苦笑を返すしかない。
もっくんは仕方ないなぁと呟き、ひょいと直立。足元でお座りをしていたすーちゃんももっくんの隣に並ぶ。そうか。すーちゃんは普通の人にも見えるけど、しっかりばっちり普通の猫だから見られても支障はないか。
「・・・・・・あー、敏次はっけーん。あいつも連日ご苦労なことだな、元気だねぇ。」
うんうんと褒めてるのか貶してるのか良く分からない感想を述べる。
「疲れるほど働くと、あとに響くな。・・・昌浩のように。」
「納得。」
すーちゃんの言葉に思わず頷くと、昌浩にちょっとにらまれてしまった。
「でも、敏次殿って、偉いよね。俺、本気でそう思う。」
もっくんの話しだと、陰陽寮ではかなりねちねちと嫌味攻撃を受けているらしいが、昌浩の方はほとんど堪えていないようで。本気でとっしーを尊敬しているらしい。・・・昌浩、君はそのまま、純粋でいてくれ・・・。
そんな事を考えているうちに、空気が変った。昨日の、あの嫌な空気だ。そして、
「――――――来た。」