それからしばらくは平和な日々が続いていた。いつもどーりに夜警に出て、いつもどーりに昌浩が雑鬼に潰されて。でも、そんな平穏な日々が、いつまでも続くわけがなかった。
「・・・!すーちゃん!」
「・・・あぁ、物凄く嫌な気配がする・・・!」
夜。眠っているところをいきなり妙な気配に襲われた。しっかりばっちりすーちゃんも感じ取ったらしく慌てて部屋からとび出すと、昌浩と鉢合った。後にはもっくんがついてきている。
「昌浩!何があったの?!」
「よく分からない。でも、北辰が翳ってる。北辰は帝の象徴。帝に何かあったのかもしれない。とりあえずじい様のところに!」
「うん!」
清明様の部屋の前まで行くと、太陰の風に乗って誰かが飛び立っていくところだった。・・・この気配は・・・六合と玄武か。玄武、太陰の風苦手っていってたな・・・がんばれ。なんてちょっと現実逃避してみたり。
そんな間にもなんか昌浩は清明様に呆れたような小言を頂いている。
「様も。」
「うぇ?俺?」
「貴女も・・・仮にも女性なのですからその姿はいかがなものかと・・・。」
「あう?」
俺は自分の恰好を見下ろしてみる。パジャマ代わりの単衣一枚。髪もいつものポニーテールから下ろしている状態。ただ、急いできたのでちょっとだけ単衣がはだけかけている。
「あー、スイマセン。お見苦しいものを。」
はだけかけた単衣を直して常に腕に常備している紐で髪を束ねる。その間、清明様の隣に隠形している青龍がなんだか必死で俺から視線を避けているのが気になったが。
その間、昌浩は清明様に参内を命じられ、俺も、中には入れないけど、途中まで一緒に行くことになり、急いで仕度をするために部屋に戻った。
速攻で仕度をして、俺と昌浩は邸を後にした。大内裏までの道。いつもと、様子が違う。
「・・・・・・気配が、ないな。」
「ああ。・・・この時間だったら、雑鬼たちが闊歩しているはずなのに。」
「っていうか、昌浩が出てきた時点で降ってくるよね。雑鬼の雨が。」
「確かに。」
「・・・否定できないかも。」
笑いながらの会話でも、緊張感だけは忘れない。
出てくる前に清明様に教えてもらった話では、この嫌な気配は黄泉の瘴気。これに捕まったら、あのナメクジみたいなのになってしまう・・・そんなのだめ・・・!
内裏近くまで行くと、門の周りには人が多い。
「どうしたんだろう。まさか、何かあったのか?」
「吉昌は有能だからな。北辰が翳ったのを認めてすぐに頭に奏上したのなら、今頃動きが出ていても不思議じゃない。」
そう行って昌浩ともっくんは陰陽寮へと向った。俺は中に入るわけにはいかないから、その場待機。但し、門の近くは人が多過ぎるので少し離れた場所に立つ。
「・・・この空気・・・すんごく嫌。黄泉って、すーちゃんの母上の管轄でしょ。どーにかなんないの?」
「・・・俺に言うな。母上の力の及ばないところで、何かが起こってるんだ。というか、俺たちは母上がお亡くなりになられてから生れ落ちたから、あまり母という感覚はないんだがな。」
「あ、そっか。」
なーんて緊張感のあるのかないのか分からない会話をしながら昌浩を待った。戻ってきた昌浩は、とてつもなく真剣な表情をしていた。
神話の知識は本当、かじった程度なのでいろいろ矛盾とか矛盾とか矛盾とかありまくりなのでスルーしてあげてくれるとうれしいです!
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