天使の子守唄 黄泉に誘う風を追えact9
気がついたら、茵に寝かされていた。重い目蓋を上げれば、見慣れた天井があった。・・・昌浩は・・・。
ぼんやりとそんな事を考えていると隣で黒いものが動く気配がした。すーちゃんだ。
「・・・おはよう・・・すーちゃん。」
「おはよう、じゃねぇ。馬鹿。力の使いすぎでぶっ倒れたんだ。覚えてるか?」
「全然。これっぽっちも。」
そう言って苦笑すると、すーちゃんは大きく一つため息を吐くと、気付いたことを知らせてくると部屋を出てく。その後姿を眺めながら、ちょっと自己嫌悪。・・・心配・・・かけちゃったんだなぁ・・・。情けない。袿を頭まで被って一人反省会をしていると、
スパーン!
「ー!!」
「ぐはぁ!」
勢いよく妻戸が開いたと思ったら太陰がダイブ。ちょ・・・!まじ死ぬ・・・!
「・・・太陰、が苦しそうだぞ。」
「あ、ご・・・ごめん!大丈夫?!」
「う・・・うん、何とか(苦笑)。」
扉の向こうから呆れたような玄武の呟きが聞こえ、太陰が慌てて俺の上からのく。
苦笑しながら、よいしょと身体を起すと、眉を八の字にした太陰が茵の脇に座り、玄武が柱に寄りかかっている姿が見えた。いつの間にやらすーちゃんも戻ってきていた。
「本当に本当に大丈夫?いきなり倒れて名前呼んでも返事しないからすっごく心配したんだからね!」
今にも泣き出しそうな顔で訴えてくる太陰に申し訳なくなってくる。
「ん。本当に大丈夫だよ。ただの力の使いすぎ。休めば、ちゃんと回復するから。心配しないで。」
ね?と太陰の頭を撫でてあげれば、子ども扱いしないでよ!と怒鳴り声が返ってくる。そんな姿が、微笑ましい。
「・・・ねぇ、昌浩は・・・大丈夫?」
さっきまで豊だった表情が、一瞬にして強張る。その変化に、一瞬、最悪の時代を想像した。
「・・・大丈夫よ。の・・・魔法?っていうのと、天一の移し身で命は助かったわ。まだ、万全じゃないけど。」
「そっか。良かった・・・。天一の方は?」
「天一も大丈夫よ。が大方治してくれてたおかげで、天一の負担も減ったし。その辺は朱雀も感謝してた。それでも、今は異界で療養中だけど。」
「・・・天一に何かあったら俺、朱雀に殺される・・・(苦笑)。」
最悪の事態だけは免れた。それだけが、今の俺の救いだ。
「本当に・・・よかったぁ・・・。」
「?!」
安心したら力が抜けてしまい、茵に倒れこんでしまった。それを見て、太陰が慌てたような声を上げる。
「ん・・・大丈夫。ちょっと安心して力が抜けただけ。もう少し眠ったら、ちゃんと回復するから。本当、大丈夫・・・だから・・・。」
最後に見えたのは太陰の心配そうな、泣きそうな顔。そのまま、俺は再び眠りに落ちた。