天使の子守唄 焔の刀を研ぎ澄ませact2

そろそろ昌浩が帰ってくる頃からなー、とか、帰ってきたらまた魔法かけてあげなきゃ、とか考えてると、
ー!!」
「ぐふぅ!」
太陰にいきなり抱きつかれました(現在地・屋根の上)。

「・・・太陰、お願いだから。抱きついてくるのはいいけど、場所を考えて・・・。お願い・・・。」
「・・・ゴメン・・・。」
太陰に抱きつかれて屋根から転げ落ちそうになったが、何とか踏みとどまり落ちずに済んだ。それについてため息混じりに言えば心底申し訳なさそうな答えが返ってきて怒る気も失せるって言うものだ。
「いいよ。次からは気をつけて。・・・ところで太陰、昌浩と一緒にいったんだよね?昌浩は?」
朝太陰と六合が昌浩についていったはずだと思い、訊ねれば
「そーなのよ!昌浩ったら、『ちょっと車之輔のところに行ってくる。』って言って、私たちに先に帰ってろって言うの!で、ちゃんと帰ってくるのか心配だったから気配を探ってたら車之輔でどっか出かけちゃったのよ!?酷いわ!私達が清明に怒られる!」
やっぱりそこなんだ。あはは、と苦笑を洩らせば、笑い事じゃないわよ!とちょっと涙目になって返ってくる。
「大丈夫だよ。そんなに遅くはならないだろうし。昌浩だって、自分が無理をしちゃいけない身体だってことぐらい、分かってるよ。あのこもまだまだ子どもだけど・・・自分のすべきことは、しっかり分かってるから。」
むーっと、それでも納得いかない太陰を宥めて。
じゃぁ歌って!と何故そっちに行くんだと突っ込みを入れそうになりつつも、太陰の機嫌が治るならと一曲。

それからしばらくして車之輔の車の音が聞こえると同時に門の前に陣取り、帰ってきた昌浩に文句をぶちまけるのはもう少し後。

「だましたわね!」
昌浩が帰ってきたと思い、出迎えようと立ち上がれば、一目散に昌浩の下に飛んでいく(文字通り飛んで行った)太陰の第一声がこれだった。
その声に苦笑しながらゆっくり門の方へと歩く。
太陰の声に昌浩が謝り、六合が宥める声がする。
「太陰ー、機嫌直したんじゃなかったのー?」
「それとこれとは別よ!」
そう言われたらお終いだ。あははと苦笑していると、後から誰かが歩いてくる気配。あ、彰子。
「昌浩、お帰りなさい。」
「うん、ただいま。」
そのほのぼのした雰囲気で一気に場が和んでしまう。
「遅くなったときは、待ってなくていいよ。」
「そうだけど、清明様と吉昌様から出雲行きの話を伺って・・・出雲は遠いわ。ひと月近くかかるんでしょう?昌浩、まだちゃんと治ってないのに・・・。」
まるで新婚夫婦の会話だ。朱雀と天一ほどではないけど甘い。砂吐きそう・・・。彰子の言ってることはもっともなんだけどなぁ・・・(苦笑)。ってか出雲行きなんて俺は聞いてないぞ。また急に清明様が決めたのか。
「吉昌様は三月に入ったら出立だって仰っていたから、もうすぐだわ。それで、できるなら明日からもう出仕を控えてなるべく体調を整えたほうがいいって、吉昌さまと露樹様が話していたの。」
「そうだな。昌浩。しっかり体調整えないと長旅に身体がついていかなくなるぞ。」
彰子の言葉に便乗すれば昌浩も苦笑する。
「そっか・・・迷惑かけるなぁ・・・。」
「迷惑なんて思ってたら仕事なんか出来ないよ。」
そう言ってため息をつき、昌浩は彰子に向き直る。
「待っててくれてありがとう。俺、これからじい様と対決してくるから、彰子はもうお寝み。」
「対決?」
「そ。勝手に出雲派遣要員にされちゃったから、あのたぬきに文句のひとつも言っておかないと。いつもいつも、決まってから言われるんだもんさ。」
「あ、俺もー。昌浩が行くんだったら必然的に俺も行くことになるんだから。話は聞いてこなきゃ。彰子はもう寝な。夜更かしは美容の大敵よー。」
俺と昌浩の言葉にすこしほっとしたように彰子も笑う。
「そんなこといったらも早く寝ないといけないんじゃないの?」
「俺の場合美容<昌浩だからねー。仕方ないのさ!」
「お寝み。雨がくるから、風邪ひくんじゃないよ。」
俺と昌浩は清明様の待つ部屋へと向った。
爺v.s孫は読んでて毎回なごみます(笑)。
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