天使の子守唄 焔の刀を研ぎ澄ませact4

朝。雨が上がった。俺とすーちゃんは昌浩と共に出雲へ向うべく、邸を出る。門の前に行くと、既に清明様と神将たちが待っていた。
「・・・様、スサノオ尊殿。昌浩のこと、よろしくお願いします。」
「はい。」
清明様直々に頭を下げられる。言われなくとも。すーちゃんも腕の中でしっかりと頷く。と、タイミングよく昌浩も準備を整えて現われる。
「・・・墨染めの衣など、持っていたのか、お前。」
清明様がすこし驚いたように目を見張る。
「じい様、式の車之輔をお願いします。」
決意を秘めた瞳。昌浩は、本当に、紅蓮を討つつもりだ。そんな昌浩に清明様は懐から数珠を取り出し、手渡す。太陰の号令と共に俺たちは出雲へと向った。

太陰の竜巻の中。俺は腕にすーちゃんを抱きしめ、なるべく目が風酔い(?)しないようにバランスを取る。隣では昌浩が悲鳴を上げているけど・・・。
「・・・ついたらしばらく動けないな、アレは。」
「うん。そだね。俺の魔法でもさすがにアレは治せない・・・。」
がんばれ昌浩。負けるな昌浩。
なんて。これから物凄いシリアスな展開になるはずなのに緊張感ゼロなことを思ってしまった・・・。

べしゃ
「ぐえ。」
風がやみ、地上へ着陸する。と同時にまさしく「べしゃ」という何かが潰れたような擬音をバックに書き入れたくなるような落ち方をし、さらにかえるが潰れたような声を出す昌浩。あれ目回ってるな。しばらく動けないだろう・・・。哀れ昌浩。
「だらしないわねっ!これくらいの風流でのびちゃうなんて!」
そんな昌浩に太陰は容赦ない一言をお見舞いする。
「・・・これで、『これくらい』?」
周りを見れば派手に木が吹っ飛ばされている。これで・・・『これくらい』?
「・・・太陰にとっては『これくらい』なのだろう。機嫌が悪い時は・・・もっとすごい事になるな。」
「・・・お目にかかりたくないね・・・。」
昌浩程ではないが、少々ふらついている玄武に声をかければそんな答が返ってくる。・・・うん。太陰は怒らせないようにしよう。
その間にも昌浩は太陰に現在地を訊ね、清明様の計画性のなさに微妙に青筋が浮かんでいる。
「・・・帰ったら計画性と言うものを清明様に教えて差し上げましょうねー・・・。」
地図とにらめっこする昌浩の肩をぽんと叩けば、そだね。という声が返ってくる。
「で、どーします?」
「太陰に風読みをさせよう。」
「え?」
勾陳の一言に太陰が心底嫌そうな顔をする。
「勾陳、風読みって何?」
「風はすべてとつながっている。風の乗せてくる音、気配。これらで距離と位置を掴むことができるだろう。」
「そんなことできるんだ。」
「便利だねー、ってなわけで太陰よろしく!」
勾陳の説明に関心し、太陰に向けてぐっ!と親指を立てると、物凄い勢いで拒否。
「む、むりむり、絶対むりよ!そういうのは白虎の得意技で、わたしは白虎の伝えてくる情報を読むのが専門なんだからっ!」
「でも今白虎いないもん。」
太陰が詰まる。さらに玄武も追い討ちをかけ、結局しぶしぶながら太陰は風読みを始める。
「太陰て、こういうの苦手なんだ。」
「苦手というより、毛嫌いしてやらんのだ。」
「細かい芸当は気に入らないらしくてね。」
「あー・・・なんか分かるかもー・・・。」
物凄い勢いでなぎ倒された木々を見れば、まぁ・・・几帳面ということはないだろうな・・・と思う。神将に血液型があるとすれば太陰は・・・O型かなー・・・。
「つーか、勾陳て、よく見てるよねー。」
「見ていると面白いからな。」
「確かに。」
、お前もその中に入っているのだぞ?」
「マジですかー?俺面白い?」
「あぁ。特にあの青龍が気にかけるなんてな。清明以外で初めてだぞ。」
「それは褒められているのでしょうか?」
「もちろんだ。」
そんな会話を勾陳としていると太陰の悲鳴が会話を打ち切らせた。
「どうしたの太陰!?」
「太陰、どうした!?」
青ざめた顔をする太陰に昌浩と共に駆け寄ると呟くように、震える声で言った。
「風音・・・このままじゃ、殺されるわ・・・。」
「え?」
全員が、息を飲む気配がした。
シリアス路線から脱線した(笑)。
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