天使の子守唄 焔の刀を研ぎ澄ませact5
そのあと速攻で太陰に腕をがっちりホールドされ、走るって言うか・・・引きずられている状態?
「いま、どうなってるんだ!?」
その状態で質問できる昌浩、あんたは勇者だよ。それに太陰が答えつつ、他メンバーが文句を言いつつ走る走る。因みにすーちゃんは抱えて走るのも大変だからと黒曜バージョンで隣を走っております。
「声が、小さいわ。・・・・・・追い詰められてる、気配が、途切れる・・・!」
同時に全員の足が止まる。太陰は気配を探るように周りを見回す。
「結界か何かで風が止められた!場所がわからない!」
「それじゃ、どうすれば・・・」
「風の軌跡をたどれ!完全に掻き消える前に!」
昌浩の困惑した声をさえぎったのは六合だった。・・・ちょっとびっくり。六合もあんなふうに怒鳴るんだー・・・なんて思ってたら、
「・・・・・・完全に惚れたか。」
「うぇ?!」
勾陳の呟きに思わず変な声を出してしまった・・・。・・・マジですかー・・・。そーかー・・・六合がー・・・。
「・・・。現実逃避してる場合じゃないぞ。」
「あ、ゴメン。」
勾陳の声に我に返って、風をたどるため走り出した太陰を追いかけた。
しばらく走った俺たちは、嫌な風に眉間に皺を寄せた。これは・・・黄泉の風・・・瘴気・・・。
「近い・・・!」
「うん、でも、どこに・・・!?」
慌てる昌浩を勾陳が宥める。
「落ち着け。風上に進めばおのずと辿り着く。」
全員が風上を見詰めたその瞬間、何か、とてつもなく大きな力が爆発したような衝撃に襲われた。
「うぉう!・・・何?!」
「風音、見つけた・・・!」
太陰の呟きに一番に反応したのはやっぱり六合だった。
「どこだ!?」
「あっちよ、あの山のほう、・・・・・・あの化け物に追われてるんだわ!」
その言葉に、全員が駆け出した。
目の前で、風音が倒れている。周りにはあの巨大ナメクジが何匹も群がっている。
「どけ――――――っ!」
気味の悪い触手が風音に襲いかかろうとした瞬間、六合の怒声が響き渡り、銀色の槍が、ナメクジを真っ二つに切り裂いていた。続いて昌浩の真言が他のナメクジに降りかかる。
「風音・・・!・・・間に合うか・・・”癒しの風”!」
攻撃は昌浩たちに任せて俺は胸の辺りが血に染まった風音の隣に跪き、魔法を使う。あぁもう!出血が多過ぎる・・・!
「・・・・・・と・・・だ・・・、封印・・・の・・・もと・・・に・・・」
途切れ途切れの言葉をナメクジを倒した昌浩達が聞いていた。風音の指差すほうにはナメクジが這ってた跡がある。
「・・・だ・・・こ・・・これいじょ・・・む・・・むり・・・。全力ふるすぴぃどでやったけど・・・出血・・・多過ぎ・・・」
ぜはーと息を吐いて倒れこみそうになる俺を黒曜が後から支える。
「無理をしすぎだ。この後もまだお前のやるべきことが残っているんだからな。」
「うい。」
よいしょと立ち上がると勾陳が大丈夫かと目で訴えてくるが、大丈夫と返して。
「時間がない・・・。六合、頼む。」
勾陳の一言と共に俺たちはナメクジの後をたどって、走り出した。風音が生きられるかどうかは・・・本人しだいだ。