天使の子守唄 焔の刀を研ぎ澄ませact8
聖域の中に入っても化け物の襲撃は止まない。ふっ飛ばしてもふっ飛ばしても後から後からうじゃうじゃと・・・しつこい!
「ナウマクサンマンダ・・・」
「あ、昌浩ストップ。」
「すと・・・?え?何?。」
「雑魚は俺等が片付けるから昌浩は力を温存しておくこと。昌浩には、一番重要な役目があるでしょ?」
片手で斬魄刀を振るい、雑魚を一掃しながら言えばなんだか困ったような顔をする。
「昌浩。」
いつの間にか隣にいた勾陳が手を差し出すとそこ剣が出現する。
「朱雀の大太刀が形を変えた。神将殺しの、焰の刃だ。」
昌浩は、淡々と、静かに言う勾陳と、その手に掲げられた剣を見詰める。向こうではなんか八つ当たりの様に鎌を振り回す青龍の姿が目に入る。・・・青龍さん怖いです・・・。
「お前に、清明からだ。」
そう言われて、昌浩は震えながら剣を手にする。
「神殺しの・・・焰・・・。」
呟いて、ぐっと唇を噛み締める姿が、痛々しい。
「さーて。この雑魚ども吹っ飛ばすから、ちょー待ってねーv」
「え?でも、こいつらは・・・」
わざと明るく言ってみれば困ったように呟く。
「・・・十二神将勾陳の力、とくと見るがいい。」
「俺も忘れないでねーvv」
勾陳の身体から神気がほとばしる。俺も、ギリギリまで力を解放するため、翼を広げる。死神の鎌を構える。その気配を感じたのか、視界の端で青龍が巻き込まれないように下がるのがわかった。昌浩が呆気にとられた顔をする中、勾陳が筆架叉を振り下ろす。俺もそれに合わせて鎌を振るう。衝撃波が当たり一面を多い尽くす。次の瞬間には化け物たちは塵一つ残さず消滅。
「すごい・・・。」
「騰蛇は、私より強いがね。それに、がいたから、私も実力を全部は出していないよ。」
「褒められた?」
「あたり前だ。」
緊張感のない会話をしていた俺たちは、彼方から響く音にで、現実に引き戻された。あれは・・・異形のものの鳴き声。
「・・・・・・あっちだ。」
駆け出す昌浩を、無言で追いかけた。
千引磐の前に辿り着いた時、屍鬼が守護妖の蜥蜴を絞め殺さんとしている時だった。そこへ、
「青龍!」
青龍の衝撃波が蜥蜴に絡み付いていた炎の蛇を一瞬にして消し去り、そのまま屍鬼に大鎌で襲い掛かる。が、
「勾陳、邪魔立てをする気か!?・・・そこをどけ・・・・・・!」
屍鬼に鎌が届く前に、勾陳がそれを止める。青龍は殺気をむき出しにして、勾陳を睨みつけるが、勾陳は動こうとしない。
「騰蛇を殺すと、言ったはずだ!騰蛇は理を三度犯した、いまさら生きながらえさせる理由などない!」
神気と怒気と、いろいろな感情が入り交ざった気が青龍から発せられる。そんな中でも勾陳は冷静に青龍を抑える。そして、いっそすがすがしいほどに微笑んだ。
「それは聞けない相談だ。」
勾陳の身体からも神気が放たれる。
「どうしてもというなら、この私を倒してからにすることだ。もっとも・・・かなわふ勝負を挑むほど、お前も愚かではないだろう―――?」
圧倒的な力の差を見せ付けられ、青龍は後ずさる。
「それに、清明の命令だ。昌浩が手にしているのは、神将殺しの焰の刃。覚悟をさだめた人の意思は、我らが考えている以上に強固だ。」
淡々と、昌浩を一瞥し、子どもに言い聞かせるように語る。
「昌浩の覚悟を見届けること。それが、我らにくだされた命令だよ。」
「・・・、お前はそれでいいのか。」
「うん。俺は、昌浩の決めたことに従うだけ。昌浩の意思を尊重する。」
少し悲しいけど。それが、
昌浩が決めたことならば。