天使の子守唄 焔の刀を研ぎ澄ませact9

昌浩が障壁を展開する。瘴気を遮断し、屍鬼の力を削ぐ。さらに呪文で屍鬼の身体の自由を奪って行く。屍鬼が抵抗しするが、それをも昌浩の呪文が阻む。
「謹請、甲弓山鬼大神――――」
昌浩の口から呪文が紡がれる。
「此座降臨影向し、邪気悪気を縛りたまえ!」
昌浩の声と同時に屍鬼が崩れ落ちる。
「・・・昌浩って実は凄かったんだ・・・。」
「お前なんだと思ってたんだ・・・。」
「いやぁ、凄いとは思ってたよ?あの怨霊の調伏したのも凄かったしね。でもさ、いつも見てるあの雑鬼に潰される様子。あれ見ちゃったら夢だったのかなー・・・とか思っちゃうわけで。」
「・・・。」
本当に緊張感ないな、俺。黒耀とそんなやり取りをするのを勾陳は青龍を制しながら苦笑してみてる。
その間にも昌浩は呪文により、屍鬼を確実に捕える。
「炎に焼かれて死ねよ!」
紅蓮の声で、屍鬼が叫ぶ。その腕から炎の蛇が昌浩に襲い掛かるが、それを剣で撥ね返しながら昌浩は屍鬼へ突っ込んで行く。
「この術は凶悪を断却し、不詳を祓除す・・・!」
剣をかざして、屍鬼を見据える。最後の足掻きといわんばかりに炎の蛇をいくつも繰り出してくるが、それをも祓いながら、真言を唱え続ける。
昌浩は本気だ。本当に、屍鬼を・・・紅蓮を討つつもりなんだ・・・。
―昌浩、今君は何を思う?―
ついこの間まで、本当に仲がよさそうに、笑っていたのに・・・。
でも、昌浩が決めたのなら、俺はそれをしっかりと、見届けるよ。それが俺の『役目』ならば。
考えているうちにも、昌浩の口から紡がれる真言は屍鬼の妖力を確実に削ぐ。そして―
よせ―――っ!
「―――!」
屍鬼の絶叫。
昌浩は声にならない叫びと共に剣を振りかざし、屍鬼―紅蓮―を貫く。
屍鬼は本当に最後の足掻きといわんばかりに昌浩の首に手をかけた。思わず駆け出しそうになるのを、黒耀にとめられ、見ていろと、目配せされる。よく見れば、昌浩の口が動いている。そして、
「万魔拱服―――!」
焰の剣が輝き、光がその場を支配した。
シリアスは疲れるよぉ…(←
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