天使の子守唄 真紅の空を翔けあがれact1
あれから昌浩の体力その他もろもろが回復するのを待つのと、昌浩の兄である成親が到着するのを待つため、庵に留まっている。黒耀は天照様に報告に行くとか何とかで別行動中。まぁ・・・天照様のことですから?全部ご覧になってはいると思いますけどねー、って言ったら、「それでもちゃんと報告しないと後が恐ろしい」のだそうです。・・・わからなくもないよ。
で、現在。
「・・・ねぇ、・・・。」
「ん?何?昌浩。」
「なんで俺に抱きしめられてんの?」
「昌浩恰好が寒そうだから。今体力落ちてんだから、そんな恰好してたら風邪ひくんだよ?」
「だからって何でこの体勢?」
「何となく?」
「・・・(青龍が見たら眉間の皺が増えそうだなぁ・・・)。」
そう、俺は木の根元で座り込む昌浩を後ろから抱きしめている恰好だ。太陰と玄武が食料調達に行って中々帰ってこないから外で待ってると言い出した昌浩にくっついてきている。一応、勾陳には許可貰った(しぶしぶだけど)。六合は見回りだし、襟巻き代わりのもっくんは・・・アレだしなぁ(苦笑)。とか思ってると気配を感じて振り向けば
「あ、帰ってきた。」
太陰と玄武が帰ってきて俺と昌浩の状況を見てなんだか複雑そうな顔をする。や、反応が違うよ、二人とも。
「昌浩、、そんなところにいては・・・」
玄武が声をかけてくるが、昌浩の目にはその姿が映らない。
「玄武?どこだ?」
その呟きに太陰と玄武が神気をを強めてその姿が昌浩にも映るようにする。その姿を見て昌浩が俺の腕の中でほっと息をつくのがわかった。
「おかえりー。」
「お帰り。あんまり遅いから、待ってたんだ。」
「すまん。少し、時間がかかってしまった・・・。」
申し訳なさそうに呟く玄武はなんていうかー、見た目年齢な感じで物凄く可愛いです!あ、言っとくけど俺はショタじゃないぞー。どっちかと言うと年上が好みだ(誰も聞いてねぇよ)。
「や、寝てばっかりなのにもあきたから、気分転換にちょうど良かった。・・・ちゃんと、勾陳にも許可もらったし。」
「俺が一緒にいるって言ったからね。それでもかなりしぶしぶって感じだけど。」
「・・・で、そのその体勢なわけ?」
「そ。あ、太陰も抱きしめてほしい?」
よいしょと昌浩を立たせてかもーんと両手を広げてみれば違う!と顔を真っ赤にして怒鳴る太陰。ちぇー。つまんないのー(え)。
そんな様子を見て昌浩は苦笑しながら少し寂しそうに目を伏せる。
「・・・やっぱり、ちょっとしんどいかな。あ、そばにいるな、ていうのはちゃんとわかるし、声も聞こえるから、大して問題はないと思ってたんだけど・・・。あ、はちゃんと見えるからね。」
「あたりまえでしょー。俺は元人間よー。いきなり姿消したりなんか出来ませんからー。」
けらけらと笑えば昌浩の表情が少しだけ、ほんの少しだけ緩む。
「そろそろ日も暮れるし、中に入ろう・・・ん?」
「・・・わぁ・・・。」
俺も昌浩も目を丸くする。何故って理由は簡単。
「・・・太陰、それどうやって仕留めんの?」
「簡単よ。突進してくる鼻面めがけてこう、風の鉾を叩きつけるの。」
「・・・・・・簡単なんだ。」
俺と昌浩はちょっと顔を引きつらせてしまった。何故って・・・太陰が引きずってきたのはでかい猪だったから。だってねぇ・・・普通に見たら・・・太陰みたいな可愛い女の子がこんなの引きずってきたらドン引きよ?普通はね。まぁ普通じゃないんだけどね!!
「ええ。簡単。一発で動かなくなるから、とどめを刺して血抜きをして、あとはさばくだけ。ああ、毛皮もなめせば使えるけど、どうする?」
「・・・何処のベテラン猟師だよー・・・(苦笑)。」
ぼそりと呟いてみるけど、誰にも聞かれていなかったようで。
「これからの季節に毛皮は必要ないだろう。それに、ここにはそれほど長期滞在するわけでもない。さしあたっての食糧確保が出来ればいいのではないか?」
とか何とか。勾陳と六合はどうしたとか話しているうちにまた昌浩が少し肩を震わせているのに気付いてもう一度後から抱きしめる。
「・・・・・・。」
「だってさー。昌浩が本調子にならないと帰れないんだよー?まぁ、成親様だっけ?が到着しないことにはどっちにしろ移動は出来ないけどさ。」
上目遣いににらまれても可愛いだけですーvvと、視線を感じてふと玄武の方を見れば、直に目をそらされてしまったよ。何かしたかなー?俺?
「昌浩。」
「ん・・・?」
「勾陳と六合はわかった。・・・騰蛇は、どうしている?」
太陰が肩を震わせる。でも、昌浩の表情は・・・変わらない。
「さぁ・・・。近くには多分、いると思うんだけど。勾陳たちがそう言ってたし。でも、そういえばさっきから、姿を見てないな・・・。」
他人事の様に淡々と言うその身体は、少し、震えている。
「・・・そうか。」
「でも、近くにはいるんだと思うよ。朝方ちらっと白い尻尾が見えたし。」
ふと、寂しそうに、微笑む。
「不思議だよね。玄武たちのことは見えないし、近くにいるはずの妖も見えないのに。なんで、あの白い姿だけは見えるんだろうね・・・。」
何かをこらえるその姿が、とてつもなく痛々しくて。思わず涙がこぼれそうになった。