天使の子守唄 真紅の空を翔けあがれact5

いきなりとび出してきた黒い妖に、昌浩を囲み、かばうようにして対峙する。
「大丈夫?昌浩。」
「う、ん。なんとか・・・。」
固い声で、平静を保とうとしながら返事を返してくるけど、明らかに動揺しているのがわかる。見えないだけで、気配は感じているんだ。恐怖の対象でしかないだろう。それにしても・・・ウザイ!(怒)。
「昌浩!」
一瞬、気を取られた隙に昌浩が倒れかける。ちくしょう・・・うっとおしいなぁ・・・(怒)。
「・・・、アレの足を止められるか?」
「・・・そんなに長くはもたないけど。」
「それで十分だ。六合、昌浩を。」
勾陳の言葉に頷くと、昌浩を六合に預けて前に出る。
「まどろっこしい。一閃でで薙ぎ払う。」
「・・・払うのはいいんだけど、庵倒壊とかやめてね?」
「・・・。」
え!?ノーコメントですか姐さん!!それはそれで恐いんですが!!
突っ込みを入れても多分返してくれないんだろうなぁと思い苦笑しながら魔法を繰り出そうと集中したそのとき、後で騰蛇の神気を感じた。ふとそちらに目を向ければ騰蛇が昌浩になんか理不尽な言いがかりをつけやがったのか、昌浩が悲しそうな目をしているのが見えた。・・・ふるぼっこけってーい(黒笑)。
そんな事を考えてるなんて知りもしない騰蛇は俺たちの方へ向ってくる。
「騰蛇?」
訝しげに呟く勾陳を下がらせて、妖と対峙する。
「失せろ、目障りだ。」
そう言って炎の蛇を腕に巻きつけ、一気に妖に向けて放つ。その炎は妖の断末魔の叫びと共に消えた。
「昌浩っ!」
妖が消えて、気配がないことを確認し、大きく息を吐くのと同時に太陰と玄武が戻ってくる。二人は騰蛇の姿を見るとフリーズしたように固まってしまった。太陰が物凄く頑張ってその場に留まろうとしているのが解る。
「・・・いま、対峙していたのは、人面の黒い獣か?」
「うん。うざいったらありゃしない。」
軽口を叩いているのは解っている。そうでもしないとこのわけのわからないぴりぴりした空気に耐えられない。・・・俺よりも、昌浩が辛いはずだ。
「・・・・・・紅蓮・・・。」
ぽつりと、何気ない一言。その一言が、引き金だった。昌浩のその呟きが騰蛇の耳に届いた瞬間、さらに空気が重苦しいものと化した。・・・騰蛇・・・半殺し決定。さっきよりもどんどん仕打ちが追加されているのはスルーしてください。
「―――なぜ、その名を知っている。」
怒りを孕んだその口調に、昌浩は硬直する。言葉を発することが出来ないでいる。
「お前風情が、その名を呼ぶな。」
それだけ言い捨てて、騰蛇は再び物の怪の姿に変化し、どこかへ消えて行った。ぴりぴりとした空気がなくなった瞬間、昌浩の身体が崩れる。
「・・・昌浩っ!」
「大丈夫か、真っ青だぞ。」
みんな口々に昌浩を心配する声を上げる。そんな中、俺は騰蛇が消えて行った方向をじっと見詰めていた。
「・・・どうした、。」
「・・・勾陳、一発殴るだけじゃ気がすまない。ちょっと半殺しぐらいにしてもいいかなぁ・・・(黒笑)。」
「・・・ほどほどにしておけ。相手はあの騰蛇だぞ?」
「その辺は大丈夫。黒耀に聞いたら俺、本気出したら騰蛇ぐらい強いんだってーvv(黒笑)。」
語尾にハートマークつけて言ってみれば、ちょっと勾陳は驚いたような顔をする。
「ならいいんじゃないか。私もアレの態度は少し腹が立っているからな。怪我はするなよ?」
「ふふふ・・・了解ー。」
騰蛇・・・。昌浩をこんなにしたこと、死ぬほど後悔させてあげるからねー?
主人公はチート一歩手前(爆)。
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