天使の子守唄 真紅の空を翔けあがれact6
屋根の上で勾陳と騰蛇がなにやら話をしているのを発見。ターゲット捕捉。捕獲に入ります。
「ちーっす。勾陳、話は終ったかい?」
会話が途切れた頃を見計らって屋根の上に立てば驚いたような顔をされてしまった。別に気配消してませよー俺。そんな器用な芸当はまだ(え)出来ません。
「あ・・・あぁ、終ったが・・・。」
「そっかぁ、じゃ、騰蛇借りてくねーvv(黒笑)。」
「だから『紅蓮』と・・・「あ゛ぁ?なんか言ったか?」いや、なんでもない(滝汗)。」
俺は物の怪姿の騰蛇の首根っこを掴み屋根から飛び降りる。その後からぼそりと
「・・・がんばれ。」
という勾陳の呟きが聞こえた気がした。
騰蛇を半殺しにして(殺してはいないよvそんなことしたら昌浩があそこまでした意味がなくなっちゃうからねー。)戻ってくると屋根の上に何だか落ち込んだ様子の太陰を発見。後にはお守役(笑)の玄武。
「よ。どしたー太陰。落ち込んでる太陰なんて太陰らしくないぞー?」
「・・・・・・。」
隣に座り込んでぽんぽんと頭を撫でてやるといきなりがばりと立ち上がる。
「うぉう!」
「だって、だってよ、あのままじゃ昌浩、心が壊れちゃう!」
悔しそうに、悲しそうに、悲痛な叫びが木霊する。
知ってる。昌浩が心の奥の感情と戦っていること、悪夢にうなされ、眠りが浅くちょっとした物音で目を覚まし、食事も無理矢理流し込むようにしているということを。みんな―騰蛇以外―が知っている。
「わたしたちじゃ、だめなのよ・・・!」
誰も、誰も、昌浩の傷を癒すことは出来ない。太陰も玄武も、勾陳も六合もたとえ此処に清明様や彰子がいたとしても、あの痛みを和らげてやることは出来ない。そして、それは俺も・・・。
「わたしは騰蛇が恐いわ、それはどうしようもない。嫌いじゃないけど、恐いんだものっ!」
太陰の叫びは続く。途中でなんだか支離滅裂になりつつあるけどそのままにしておく。吐き出したいことがあるときは吐き出させておこう。
「でもっ、でもっ!なんいもできないで、昌浩が壊れちゃうのはいやよっ!」
「それは我とて同感だ。」
「俺だって。」
今までずっと黙っていた玄武も口を開く。みんな、これでも昌浩のことを大事に思ってくれている。十二神将は清明様の式神だけど、それでも。
「何が最強の十二神将よ、何が現代最高峰の陰陽師よっ。こんなときになんいもできない、役立たずじゃないっ・・・!」
涙声で叫ぶと、ふと何か思いついたように顔を上げる。どうしたんだろうと思ってみていると、
「・・・・・・そうよ・・・陰陽師がいるじゃない・・・」
「はい?」
「太陰?」
意味が解らない俺達が声をかければ、太陰はばっと空を見上げる。昨日よりももっと雲に覆われて、今にも雨が降ってきそうな、灰色の空。
「すぐ戻るわ!」
叫んで、竜巻を起し、どこかへと消えた。その竜巻に巻き込まれ、玄武は屋根から落下・・・する寸前に俺が腕を掴んでおいたからなんとか落ちずに済んだ。
「こ・・・っ、このっ・・・己れ・・・!我はどうすれば・・・!」
「・・・落ち着けー・・・玄武ー・・・。」
・・・帰ったら白虎にお説教頼もうかなぁ・・・。ちょっと現実逃避気味に呟いてみた。