気になるあの子のチョコレート

二月。教室中が浮き足立っている。・・・女子が特に。
俺の周りでも女子が数人ずつのグループを作ってなにやら雑誌片手に相談をしている。
俺はそんな女子たちの姿をボーっと眺めていた。
正確には一人の女子のことを。
ふと、そのこがこちらを振り向いてニッコリと笑った。
俺は顔が熱くなるのを感じて、慌ててさっきまで読んでいた文庫本に視線を落とす。
・・・あぁ、絶対に変に思われた・・・。自己嫌悪に陥ると、また胃が痛くなってくる。
いてて・・・。

それから数日。あのこは俺と目もあわせてくれなかった。あぁ・・・絶対に嫌われた・・・。

二月十四日。
クラスの中の雰囲気が違う。まぁそれもそうだろう。
俺の机の中にも朝学校に来たら大量のチョコレートが詰まっていたし。
・・・こんなに一人で食べられると思っているんだろうか・・・?
俺は・・・あのこの席を見る。あのこは俺に見られているのに気づくと、あからさまに視線をそらした。
あぁ・・・やっぱり嫌われた・・・。

相変わらず自己嫌悪に陥りながら休み時間。トイレに行って戻ってくると机の上に出しっぱなしになっていたノートになにか挟まっている。

―放課後 校舎裏―

それだけが―几帳面なあのこの字で書かれていた。
これは・・・期待していいのだろうか・・・。

放課後。俺は期待半分、不安半分といった心境で校舎裏に向かった。
そこにいたのは俺の思い人―
「大石君。よかった、来てくれたんだ。」
「え・・・あ・・・う・・・うん・・・。」
俺は恥ずかしさと嬉しさで俯いてしまう。
「あのね、大石君。これ・・・。」
差し出されたその手には・・・綺麗にラッピングされた・・・、
「俺・・・に・・・?」
「うん・・・あの・・・迷惑・・・かな?」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうにさんは微笑っている。
「そ・・・そんな!迷惑だなんて・・・!」
「よかったぁ・・・なんか教室に居るときは無視されてるみたいだったから嫌われてるのかと思って心配したんだぁ。」
「いや・・・そんなことは・・・。」
「じゃぁ・・・これ・・・受け取ってくれる?あの・・・私・・・大石君が・・・好きです!」
顔を赤くして真剣な眼差しで俺を見つめてくる。
「あ・・・あぁ・・・こちらこそよろしくお願いします。」
俺はそう応えて彼女から綺麗にラッピングされた―チョコレート―を受け取る。
彼女は嬉しそうに微笑む。

―俺・・・幸せ過ぎかもしれない・・・―

バレンタインディキッス♪(馬鹿)。
ごめんなさい・・・!バレンタイン過ぎてます・・・!
そして大石が大石じゃない・・・!
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