教室では女子がきれいに包装されたチョコレートと思われる物体(失礼)をもって騒いでいる。
「(・・・なぜ女子はこんなにも騒ぐのがすきなのか。)」
俺には見当もつかない。
男子も誰からかチョコレートがもらえないかそわそわしているものも多い。
「(・・・一人本当に好きなやつからもらえればそれで満足だろうに。)」
そう。ただ一人。
好きな人
そう思ったとたん俺の視線は一人の女子に釘付けにされる。
。
文芸部の新部長。
黒い髪をひとまとめにして友達と何か話している。
「(あぁ・・・キレイだな。)」
俺は柄にもなくそんなことを思う。
あいつを好きになったのは二年の初め。柄にもなく一目ぼれなんてものをしてしまった。
調べモノがあって、俺は図書館へ行った。
そこでを見た。
―キレイだ―
そう思った。
窓際の席で本を読んでいた。開いた窓から桜の花びらが風に乗って入ってくる。
時折気持ちよさそうに風に当たり外を眺めるその姿がとても美しかった。
俺は思わず見惚れてしまった。
はそんな俺の視線に気が付いたのか、こちらを見てニッコリと微笑んでくれた。
俺は胸が高鳴るのを感じた。
それから俺はあいつのデータを取るのに夢中になった。
あいつのデータが増えるたび、あいつが俺のもになるようで嬉しかった。
そんなことを思っているとが俺の視線に気が付いたらしくあのときのように微笑み返す。
そしてそのまま俺の席まで駆けてくる。
「はい!乾君にも!」
そういって渡されたのは小さな包みに包まれたチョコレート。
「・・・これは?」
「ん。今日はバレンタインでしょ?とりあえずいつもお世話になってますってことで!」
義理チョコだけどね?
そういって笑って。
「・・・ありがとう。」
「どーいたしましてーvv」
笑いながらまた友達の元へと帰っていく。
俺の手の中には貰ったチョコレート。
「(やばいな・・・顔がにやけそうだ・・・。これは永久保存だな・・・そんなことしたら腐るか?)」
義理でも大好きな人から貰えたチョコレート。
来年はこれが『義理』から『本命』になるように。
「(絶対『本命』を貰ってやる。)」
俺は密かに心に誓った。